2013 Fiscal Year Research-status Report
低分子量Gタンパク質間クロストーク制御による細胞移動と軸索伸長メカニズムの解析
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24570226
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
戸井 基道 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究グループ長 (50344213)
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Keywords | 低分子量Gタンパク質 / 神経軸索伸長 / 細胞移動 / 細胞極性 |
Research Abstract |
各低分子量Gタンパク質群とRIN-1との相互的な活性制御メカニズムを明らかにすることを目的に解析を進めた。線虫のRac1ホモログ(CED-10)、Rab5ホモログ(RAB-5)およびRIN-1に対してGFPとの融合遺伝子を作製し、それぞれを各変異体に導入し、移動中の神経細胞あるいは伸長中の神経軸索で各タンパク質の挙動を解析した。生化学的解析では、RIN-1は不活性化型RAB-5とのみ相互作用し活性化型とは相互作用しない。しかしながら、rin-1突然変異体では活性化型、不活性化型を問わずその局在は野生型と変わらず、RIN-1はRAB-5の細胞内分布には関与していない可能性が示唆された。CED-10に関しても、その分布パターンに統計的には有意な差異は見られなかったが、活性化型CED-10の局在極性が大きく異常になった個体も散見された。したがって、発生のタイミングに依存してその分布を制御している可能性が示唆され、生化学的解析と併せ、活性依存的にRIN-1はRacの動態を制御している事が明らかとなった。 ガイダンス分子とその受容体を介したシグナル経路とRIN-1との関係を明確にするために、誘因性のガイダンス分子UNC-6と反発性の分子SLT-1のどちらの経路上でRIN-1が機能しているのか解析した。突然変異体を用いた遺伝学的解析では、slt-1と同じ遺伝経路上で機能し、unc-6とは相補的な経路で働いている事が示唆された。同様な結果は受容体変異体を用いた解析からも得られたが、タンパク質レベルではどちらの受容体とも相互作用していた。生化学的解析は今後より詳細な解析が必要と思われるが、RIN-1は反発性シグナルSlitの下流でGタンパク質群の活性制御に機能していると結論した。今後どの様な分子メカニズムでアクチンの極性形成に繋がっていくのかを解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各Gタンパク質分子の細胞内挙動とそれに対するRIN-1の関与を明らかにしたこと、ガイダンス分子群およびそれらの受容体を介するシグナル経路とRIN-1との相互作用関係を解明したことなど、目標としていた研究計画は予定通り進める事ができた。さらに、Gタンパク質群とRIN-1との複合体形成時の構造解析に向けて、新たにタンパク質精製解析に取り掛かることが出来たことも、達成度の理由として評価する事が出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、ガイダンス分子Slitとその受容体SAX-3/Roboの分子動態とRIN-1との関係を明らかにする。野生型および変異体下で各分子の発現や分布パターンを解析し、かつ分子のパターンと細胞移動や軸索伸長との関連性を明らかにする。細胞骨格としてアクチンおよびその上流制御因子の変化も解析し、ガイダンス分子からアクチン動態に繋がる分子経路におけるRIN-1の機能解明を試みる。特に、長時間のライブイメージングを試みることで、生体内での現象を捉えることに焦点を当てるが、より解析の容易な培養神経細胞を用いた解析も進めることで、哺乳類での機能の相同性を議論する。並行して、Gタンパク質/RIN-1の相互作用とシグナル伝達の詳細なメカニズムの理解に向けて、RIN-1タンパク質単独および複合体の結晶構造解析を試みる。大腸菌を用いて相互作用ドメインを含むタンパク質を発現・精製させ、その結晶解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属機関の運営費交付金が予定より多く配分され、また年度内使用だったのでそちらから優先的に使用して本研究を遂行させた。それにより、人件費、旅費とも科研費で支払う額が余剰した。 当該研究計画の補助を担当する非常勤職員を雇用するため、その人件費に約100万円を充当する予定である。残りの約11万円を実験材料の飼育に必要な消耗品費で使用する予定である。
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