2013 Fiscal Year Research-status Report
2核性単細胞生物テトラヒメナの核分化に働く核膜孔複合体タンパク質の同定
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24570227
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
岩本 政明 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所バイオICT研究室, 主任研究員 (80450683)
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Keywords | 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン / マススペクトロメトリー / 2核性 / 繊毛虫 / テトラヒメナ |
Research Abstract |
原生生物の一群である繊毛虫は、2種類の核をもつ二核性細胞である。2核を機能的に分化させるためには、核輸送を制御する核膜孔複合体が重要な役割を持つと考えられるが、繊毛虫の核膜孔複合体の構造は大部分が未解明であるため、核機能の分化と核膜孔複合体の関係は明らかになっていない。そこで本研究では、繊毛虫テトラヒメナ(Tetrahymena thermophila)の核膜孔複合体構成タンパク質(ヌクレオポリン)を網羅的に同定し、その中から核機能の分化に決定的な役割を担うヌクレオポリンの分子種を特定することを目指す。 多くの生物種において、核膜孔複合体は、約30種類のヌクレオポリンから構成されていることが知られている。本年度は、前年度に同定したテトラヒメナの新規のヌクレオポリンについて、分子構造を解析し、それらを他生物の既知のヌクレオポリンと比較することで、新規の成分がどの分子種に相当するのかを決定した。新規のヌクレオポリンの中には、大核または小核のどちらかに特異的に局在するものが、これまで知られていたNup98の他にも複数種類存在することが分かった。これらはいずれも、核-細胞質間輸送の運搬体であるインポーチンβと相互作用するためのフェニルアラニン-グリシン(FG)リピート領域を持つ成分であるため、これらが大核と小核で異なっていることが、二核間で核-細胞質間輸送を差別化できる要因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに予定していたテトラヒメナのヌクレオポリンの網羅的な同定をほぼ終えることができ、さらには、26年度に計画している核膜孔複合体の構造解析に用いる細胞株作りも着実に進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル生物の核膜孔複合体の構造を指標として、テトラヒメナの主要なヌクレオポリンのほぼ全てを同定し、それらの中から大核と小核にそれぞれ特異的なヌクレオポリンを複数種類見出すことができた。核特異的なヌクレオポリンは、二核間で核-細胞質間輸送を差別化し、個別な核機能の発現に必要な機能性タンパク質を核内へ運び入れることで核機能を分化させるものと考えられる。したがって、これらのヌクレオポリンをそれぞれの核に特異的に局在させる構造的な仕組みこそが、核機能を分化させるための最重要基盤であると見なすことができる。今後は、核特異的なヌクレオポリンのインタラクターを特定し、それらの核膜孔複合体内での配置を調べることで、特定のヌクレオポリンが核特異的に局在できる構造的な理由を明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)