2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな領域形成における領域特異的転写因子の発現制御と細胞増殖制御の相互作用
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24570230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小嶋 徹也 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80262153)
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Keywords | 付属肢 / 領域化 / 転写因子 / 発現制御 / 細胞増殖 / 昆虫 |
Research Abstract |
真核多細胞生物の組織や器官の発生過程では、組織の成長に伴い、種々の領域特異的転写因子の発現が時々刻々と変化することで、最終的な形態に対応する領域に分割される領域化が重要である。このメカニズムの理解を目標として、ショウジョウバエ成虫肢形成過程、特に付節領域の分節化過程をモデル系として、種々の領域特異的転写因子の発現と機能について詳細な解析を行った。 ショウジョウバエ成虫肢の付節は第1付節~第5付節の5つの分節から構成されるが、発生初期には多くてもBarを発現する領域とDachshund (Dac)を発現する領域の2つの領域にしか分割されておらず、その後の組織の成長に伴い、BarやDacの発現が変化して、最終的にBarが強く発現する領域、弱く発現する領域、BarもDacも発現しない領域、Dacが弱く発現する領域、強く発現する領域の5つに分割される。平成24年度では、この過程でNubbin (Nub)、Rotund (Rn)、Apterous (Ap)という転写因子による発現制御機構と組織の成長のバランスが領域化に重要であることがわかり、平成25年度では、さらにodd-skipped familyの4つの転写因子の機能と細胞増殖を制御するHippo経路についての解析から、Hippo経路の上流因子Four-jointed (Fj)の発現が上記の複数の転写因子によって同時に制御されることでその正確な発現領域および発現量が制御されており、これが組織の成長の正確な制御につながっていることを示唆するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、odd-skipped familyの4つの転写因子と平成24年度に調べた転写因子との関係についてさらに調べて、付節の領域化に関わる転写因子の機能の全貌を明らかにすることと、組織の成長の制御に関わるHippo経路と上記転写因子との関係を明らかにすることを目標とし、Dacおよびodd-skipped familyの転写因子がHippo経路の上流因子Fjの発現領域と発現量の決定に重要な役割をしていることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度で付節形成に関わる転写因子の機能と細胞増殖に関わるHippo経路の関係の一端を明らかにすることができたので、平成26年度は、さらにこの関係の詳細を解析すると共に、Hippo経路が具体的にどのように付節領域の細胞増殖を制御しているのかについて、明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね当初の予定どおり順調に研究を進めることができたため、抗体や形質転換体の作成等の一部を行う必要がなくなった。一方で、Fjの発現制御には、予想外に多くの転写因子が少しずつ関係するという複雑なものであることがわかってきたため、平成26年度でさらに詳細に解析する必要性が出てきた。 Fjの発現制御の詳細を解析するための抗体染色試薬やショウジョウバエ形質転換体の作成、ショウジョウバエ飼育などに使用する。
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