2012 Fiscal Year Research-status Report
成体組織に存在するOct60発現細胞の起源と多能性に関する研究
Project/Area Number |
24570240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
木下 勉 立教大学, 理学部, 教授 (30161532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森近 恵祐 立教大学, 理学部, ポストドクトラルフェロー (30593074)
久保 英夫 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究部門, 研究員 (50178034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アフリカツメガエル / 変態 / 幹細胞 / 造血 / Oct60 |
Research Abstract |
アフリカツメガエルの成体組織から検出されるOct60発現細胞は、組織の更新、維持に関わる多能性幹細胞であると予想される。この細胞の種類と起源を明らかにするために、平成24年度では、免疫染色と遺伝子発現解析により、組織内のOct60発現細胞の局在を解析するとともに、組織のモザイク移植を行い、Oct60発現細胞の起源を解析した。 1.成体組織におけるOct60発現細胞の解析:変態期におけるOct60遺伝子の発現を器官ごとに比較した結果、卵巣、精巣以外に肝臓、腎臓、血液内にOct60発現細胞が検出された。これらのOct60発現細胞は小形の球形細胞で、Oct60とBmi1を共発現し、貧血誘導に応答して細胞数を増加させることがわかった。 2.Oct60発現細胞の起源に関するモザイク解析:神経胚後期にX.borealisの背側側板中胚葉(DLP)をX.laevisへ移植し、変態後の細胞の移動先を解析した結果、DLP由来のX.borealis細胞は変態後の子ガエルの肝臓、大腿骨骨髄中から検出された。大腿骨では変態後1ヶ月までに軟骨から硬骨への組織変換が起こり、骨端部にDLP由来のX.borealisの細胞が検出されるようになった。この時期には骨端部への毛細血管の移入が観察されるとともに、骨端の細胞増殖層内から多数のOct60発現細胞が検出されるようになった。 以上の結果から、成体の肝臓、腎臓、骨髄、血液から検出されるOct60発現細胞は造血系幹細胞であり、初期胚のDLPに由来する細胞が血流を介して成体の造血器官へ多能性幹細胞として定着したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、アフリカツメガエルのOct60発現細胞の種類と起源を解析することにより、成体組織に存在する組織幹細胞の形成機構を明らかにすることを目的としている。平成24年度では、成体器官におけるOct60発現細胞の局在を明らかにすることを目標とし、造血器官に共通してOct60発現細胞が検出されること、貧血誘導によりOct60発現細胞の増加が起こることを明らかにすることができた。また細胞のモザイク移植実験により、Oct60発現細胞の起源が、神経胚期の背側側板中胚葉(DLP)由来である可能性を示すことができた。生殖巣以外の器官から検出されるOct60発現細胞の全てが造血に関わるのかについては明確にできなかったが、おおむね当初の目的を果たすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、造血系幹細胞以外にもOct60を発現する多能性細胞が存在するか否かを明らかにするために、個体発生におけるOct60発現細胞を網羅的に調べるとともに、DLP由来の造血細胞に及ぼすOct60遺伝子の影響を解析する。具体的には以下の実験を行う予定である。 1.個体発生の全過程を通してOct60発現細胞の動的変化を解析するために、抗体を用いた免疫染色に加えて、Oct60発現細胞をGFP蛍光でモニターできるトランスジェニック個体を作製する。プロモーターの改変と遺伝子導入法を改良し、従来よりも正確にOct60発現細胞をモニターできる個体の作製を計画しており、細胞追跡とともに、Oct60発現細胞の種類を検討する予定である。 2.造血幹細胞の形成に及ぼすOct60の影響を調べるために、成体造血細胞の起源となるDLP領域においてOct60の過剰発現と機能阻害を行う。Oct60にグルココルチコイド受容体を結合した融合タンパク質Oct60-GRをDLP領域で発現させ、尾芽胚期以降にDEXを加えてOct60の活性化処理を行う。また、Oct60に対するモルフォリノオリゴDNAを注入し、DLP領域におけるOct60タンパク質の翻訳抑制を行う。これらの処理個体を変態後の子ガエルまで飼育し、成体の造血器官における幹細胞の量的変化を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の収支状況はおおむね予定通りとなった。一部の消耗品の使用量が予定より少量で済んだため、残った消耗品費の残金を次年度繰り越し金とした。平成25年度の研究費は、トランスジェニック個体の作製と細胞追跡を行うグループ、Oct60の機能解析を行うグループ、いずれのグループにおいても多くの試薬と使い捨てのプラスチック器具、ガラス器具を使うため、研究経費のほとんどを消耗品費として使用する予定である。 具体的には、生物材料となるアフリカツメガエルは、人工受精用の成体に加えて、変態後の子ガエルも使用するため、年間50匹以上を購入予定である。2つの研究グループともに幼生および成体の組織学的解析が必須であり、固定液、染色液、抗体など免疫組織化学的解析に必要な試薬、ガラス器具の購入を予定している。また、Oct60発現細胞をGFP蛍光で検出するためのトランスジェニック用のコンストラクト作製、Oct60の過剰発現用コンストラクトの作製に使用する遺伝子組み換え用試薬、RNA合成用の試薬、プラスチック器具の購入も予定している。 得られた研究成果を発表するために、学会出張の旅費を見積もっている。
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Research Products
(8 results)