2012 Fiscal Year Research-status Report
体内受精の成立に関わる精子運動開始機構の適応的進化に関する研究
Project/Area Number |
24570246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 絵理子 山形大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20337405)
中内 祐二 山形大学, 理学部, 助教 (60250908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 体内受精 / 精子運動 / 機能進化 / 両生類 / 輸卵管 |
Research Abstract |
両生類において、体内受精様式は体外受精様式から進化的に確立されたが、この進化に必要な適応的変化の詳細は不明である。卵ジェリー層等、両生類の卵管分泌マトリクスは、種によって形状や性状が異なり、淡水中や陸上の様々な環境に応じた受精環境を作り出している。一方、卵管分泌マトリクスの強い関与の下で起こる卵-精子相互作用には、しばしば種特異的な特徴が見られる。これらのことは、両生類の生殖様式の進化において、卵管分泌マトリクスの変化に受精機構が適応したことを示唆する。本研究では、有尾両生類の体内受精特異的な精子運動開始機構を手掛かりとして、両生類における卵管分泌マトリクスに依存した受精機構の適応的な変化の実体を明らかにする。 本年度は、タングステン型、及び電解放射型走査型電子顕微鏡を用いてアカハライモリの卵ジェリー層表層を詳細に観察した。その結果、精子運動開始因子(sperm motility-initiating substance; SMIS)が局在する直径約2μmの顆粒が直径約54 nmの粒子によって構成されていることが明らかになった。このことは、未解明のSMIS活性化機構の解明に重要と考えられる。一方、イロワケガエル、モリアオガエル及びアフリカツメガエルの卵管分泌マトリクスの形状を詳細に観察したところ、それぞれ、ネットワーク状、繊維状などの特徴的な形態が観察されたが、顆粒状構造は見られなかった。このことから、アカハライモリ卵ジェリー層表層の精子運動開始機構は、有尾類の体内受精様式に適応して進化したものである可能性がある。今後、SMISの局在様式を調べ、さらに検討する。一方、SMISの遺伝子及び分子構造における変化を調べるために、アカハライモリゲノムDNAを鋳型としたPCR解析を開始し、SMISの活性部位に結合する抗体を作成した。これらの実験は、次年度に継続して行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵ジェリー層マトリクスの微細形態観察についてアカハライモリを含む4種において実施し、良好な結果を得ることができ、アカハライモリ卵ジェリー層の微細構造の特異性が明らかになった。また、精子運動開始因子(sperm motility initiating subsatnce; SMIS)の機能部位を構成するアミノ酸配列を認識する抗体の作成に成功した。これにより、精子がSMISに対して反応するモリアオガエル等の種におけるSMISの特徴を生化学的に解析することが可能になった。また、アカハライモリSMIS遺伝子構造の解明のため、ゲノムDNAを鋳型としてPCRによる解析を開始した。この実験は、本プロジェクトの中で、難易度が高いものであるが、現状では順調に実験が進んでおり、今後、良好な結果を得られるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
走査電子顕微鏡を用いた卵管分泌マトリクスの微細形態観察については、抗SMIS抗体を用いた免疫電子顕微鏡学的手法に挑戦し、SMISの局在様式の解明を目指す。また、卵管分泌マトリクスの抽出液を調整し、これを試料としたイムノブロット解析により、SMISの分子サイズと等電点を種間で比較し、SMIS分子の性状の変化と進化との関連性を明らかにする。さらに、アカハライモリSMIS遺伝子の構造の解明のためにSMIS遺伝子を含むゲノムDNA断片を単離する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(14 results)