2012 Fiscal Year Research-status Report
酵素の立体選択性におけるフレキシビリティーが生まれる原因解明
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24570247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
島田 秋彦 筑波大学, 生命環境系, 講師 (90235614)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光学分割 / DL-セリン / リン酸アンモニウム / トリプトファナーゼ / 立体選択性 |
Research Abstract |
これまでの研究で、高濃度リン酸アンモニウム溶液中でトリプトファナーゼの立体選択性は可逆的に微小変化し、D-トリプトファンの分解反応が可能になることを明らかにした。さらに、インドールとセリンでL-トリプトファンを合成する反応で、D-セリンが基質となることもわかった。本研究は、このトリプトファン合成反応においてD-セリンがトリプトファナーゼ活性部位内でどのような中間体を形成し最終的にL-トリプトファンが合成されるのか検討することを目標としている。D-セリンが反応する原因として2つの可能性が考えられる。1つはD-セリンがトリプトファナーゼの活性部位内で直接補酵素と結合し中間体を形成する可能性と2つ目にD-セリンが高濃度リン酸アンモニウムの作用を受けてラセミ化し、その結果できるL-セリンがトリプトファナーゼと反応するという可能性である。平成24年度では後者の可能性である高濃度リン酸アンモニウム溶液中におけるD-セリンのラセミ化の可能性について検討した。本研究では以下の手順で行った。 60℃の20%飽和濃度のリン酸アンモニウム溶液中で、D-セリンを6時間浸漬する→ このD-セリンをHPLC用光学分割カラム・クラウンパックCR(+または-)で光学分割する→D-セリンを円二色性検知器CD-1595(日本分光)で分析する→リン酸アンモニウム溶液中でD-セリンのラセミ化の有無を明らかにする この研究計画を遂行するためには前もってDL-セリンを光学分割する方法を確立しておくことが必要になる。そこで、今年度ではまず最初にDL-セリンの完全分割法の確立を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一般にDL-セリンのような小分子量でコンパクトな直鎖型のアミノ酸の光学分割は、DL-トリプトファンのような大きな分子量とバルキーな側鎖を持つアミノ酸と較べてむ難しいといわれている。そこで、HPLC用光学分割カラム・クラウンパックCRにアプライする量を減らして分割を試みた。50μg/mlのDL-セリンをカラムにかけては円二色性検知器CD-1595で検知したところ、2つのピークが重なったクロマトグラムが得られた。さらに低い濃度で分割したところ分割率の上昇がみられた。10μg/ml以下になると円二色性検知器のような分光学的検出は困難になるので、共同研究をしている京都大学原子炉実験所のLCマスを借りてセリンの検出をすることにした。その結果、分割率のさらなる上昇がみられたことから、検出限界濃度まで分割を試みた。しかしながら、得られたクロマトグラムは2つのピークが重なるという不完全分割のクロマトグラムしか得られなかった。 ここまでの研究では、DL-セリンの完全分割は成功していない。カラムにかけるセリン濃度を検討するだけでは完全光学分割したクロマトグラムは得られないことは明らかである。そこで、濃度以外の他の条件の検討をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
一般に光学分割を決定する因子として重要なものは、第一に溶離液の組成とpH、次いでカラム温度である。本研究で用いている光学分割カラム・クラウンパックCRは逆相カラムのため、溶離液のpHとカラム温度によって溶離パターンが影響されるものと考えられる。そこで、今後の研究の推進方策としてこの両者のファクターを勘案してDLーセリンの完全分割を目指すことにしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで述べてきたように平成25年度は、DL-セリンの完全分割方法を確立することを主たる目標とする。そのための研究費使用計画の内訳は以下のようにした。光学分割カラムの購入として50万円、関連試薬・ガラス器具代として20万円、測定機器の維持・修理代として20万円、さらにLC-MS、自記円二色性分光器などを借用するために大阪熊取・京都大学原子炉実験所に月に1回程度出張しなければならないので、その出張費として50万円を予定した。
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Research Products
(4 results)