2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24570250
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
安増 茂樹 上智大学, 理工学部, 教授 (00222357)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 卵膜 / 分子共進化 / 孵化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓で卵膜タンパク質を合成する正真骨魚類の魚は、ニシン・骨鰾類の魚と比較して、厚い強固な卵膜を持つ魚が多くみられる。また、ニシン目のニシンは、例外的に厚い卵膜を持つ。卵膜の厚さは産卵場所にも影響し、水中に生み出され浮遊する浮性卵は、一般的に薄い卵膜を持ち、水底や藻場に産み付けられる沈性卵の卵膜は、厚いとされている。しかしながら、それらの事象を魚類を通して、網羅的に調べた研究はない。53種の魚卵の卵膜の厚さをレーザー顕微鏡を用いて測定した。正真骨魚類のそれは、カライワシ類と骨鰾類に比べて明らかに厚い。さらに、浮性卵内で比較しても厚い傾向があった。肝臓で主に卵膜タンパク質を合成するニシン目の卵膜は、正真骨魚と比べて薄いが、ニシンは厚い卵膜を持つ。このことから、肝臓で卵膜を合成する魚は、厚い卵膜を持つ魚種が多いことが示されたさらに、孵化までの積算温度と卵膜厚を比較すると、厚い卵膜を持つ魚ほど孵化までの時間が長い傾向があった。孵化までの時間が長いと胚は、より成熟した状態で孵化すると考えられ、その後の生存に有利となると考えられる。本申請研究で、ニシン目の魚は、主に肝臓、骨鰾上目の魚は、卵巣でZPタンパク質を合成する。卵膜の合成場所の進化過程での変化は、真骨魚の孵化酵素の遺伝子重複または、遺伝子喪失の時期と一致する。ZPタンパク質合成場所の転換と2種の効率の良い酵素系の成立が、正真骨魚類の魚で(特に沈性卵を産む魚において)種の生存・維持に有利に働いたことが予想される。
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