2013 Fiscal Year Research-status Report
抵抗性反応と連動したアスコルビン酸による抗ウイルス機構の解析
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24580001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
犬飼 剛 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (90223239)
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Keywords | アスコルビン酸 / カブモザイクウイルス / Brassica rapa |
Research Abstract |
ハクサイではカブモザイクウイルスに対する高度抵抗性の誘導と連動してアスコルビン酸の蓄積量が増加する。平成24年度までの結果から、このアスコルビン酸の誘導にはジャスモン酸がシグナルとして関与することが示唆されていたことから、本年度はまずジャスモン酸などの防御応答に関連する植物ホルモンについてウイルス接種後の消長を解析した。その結果、ウイルス接種後ジャスモン酸自体の蓄積量は低下するが、ジャスモン酸の活性体であるジャスモン酸イソロイシンやジャスモン酸に由来するチュベロン酸及びチュベロン酸グルコシドの蓄積量の増加が認められた。これらの結果から、ウイルス接種後一過的にジャスモン酸が蓄積していると考えられた。一方、サリチル酸やアブシジン酸はウイルス接種後減少する傾向にあった。以上の結果と平成24年度までの結果を合わせ、アスコルビン酸の蓄積誘導にはジャスモン酸が関与していると考えられた。 これまでの結果から、高度抵抗性と連動したアスコルビン酸蓄積量の増加の機構として、ジャスモン酸を介したアスコルビン酸酸化経路の抑制と酸化型アスコルビン酸還元経路の活性化が考えられた。しかし、これら経路に関わる酵素遺伝子(AO, APX, MDHAR, DHAR)についてはホモログが多く、またホモログ間でウイルス接種後の発現パターンが異なる場合もあって遺伝子発現解析の結果のみから結論するのは難しかった。そこで酵素活性レベルでも調べたところ、前述の仮説とよく一致する結果が得られた。ただし、AOについてはウイルス接種後活性が低下するのに対し、ジャスモン酸処理では活性が増加することが明らかとなった。このことから、ジャスモン酸が制御しているのはAPX, MDHAR, DHARの3酵素遺伝子で、AOについては別の因子が制御していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度も研究目的に沿った成果が得られたと判断している。その成果を平成25年度日本植物病理学会(平成26年6月開催予定)で講演発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 平成25年度の結果から、ハクサイ・カブ品種において内在性アスコルビン酸量とウイルス耐性との間に正の相関があることが示された。内在性アスコルビン酸量が増加することでウイルスの増殖が抑制されるのか明らかにするため、CMVベクターにDHA還元酵素遺伝子を組み込んだ感染性クローンを構築しており、本年度はこれをハクサイ・カブに接種して解析を進める。 2) 平成25年度の結果から、ウイルス感染に対して基礎抵抗性レベルでもアスコルビン酸蓄積量が増加することを示唆する結果が得られた。高度抵抗性の場合と同様の手法で解析を進め、高度抵抗性との異同を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2月時点での残額であり、3月末には全額使用済みです。 上記の理由により、次年度の使用はありません。
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