2012 Fiscal Year Research-status Report
ダイズ低温着色抵抗性品種が種皮着色全般に及ぼす抑制作用の解明
Project/Area Number |
24580002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
千田 峰生 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30261457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 輝男 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30142699)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黄ダイズ / 種皮着色 / CHS 遺伝子 / RNA 干渉 / ウイルス / 斑紋形成 / 低温着色 / 抵抗性品種 |
Research Abstract |
黄ダイズは種皮着色抑制遺伝子の作用により種皮着色が抑制されるため、黄色を呈する。黄色の種子色はダイズ種子品質で最も重要な形質の1つであるが、ウイルス、突然変異、低温の外的要因により本来着色されない黄ダイズが全面あるいは部分的に着色されてしまうことがある。このような種皮着色現象は黄ダイズ品質を大幅に低下させることから、これを抑制できる品種の開発が重要となる。黄ダイズの種皮着色抑制はフラボノイド生合成に関与するカルコンシンターゼ(CHS)遺伝子のRNA干渉(RNAi)による(以降、CHS RNAi と表記)。種皮着色現象はウイルス、突然変異、低温によりCHS RNAi の作用が抑制されることにより起きる。 ウイルスにより生じる種皮着色現象を斑紋形成といい、低温による種皮着色現象を低温着色という。近年、低温着色に抵抗性を有する黄ダイズ品種「トヨハルカ」が育成された。本研究では低温着色抵抗性品種であるトヨハルカが斑紋形成にも抵抗性を示すかどうかについて調査するのが目的である。 今年度は低温着色抵抗性強のトヨハルカ、中のトヨホマレ、弱のトヨムスメを用いて、ダイズモザイクウイルス(SMV)による斑紋形成について比較調査を行った。その結果、トヨホマレがもっとも斑紋形成程度が高く、トヨムスメはトヨホマレより斑紋形成程度がわずかに低かった。したがって、トヨホマレが有する低温着色抵抗性はSMV斑紋形成抑制には効果がなかった。それに対して、トヨハルカはトヨホマレやトヨムスメに比べ、斑紋形成程度に大きな減少が見られ、明らかなSMV斑紋形成抑制が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低温着色もウイルス斑紋形成もCHS RNAi の阻害による。低温着色に抵抗性を有するトヨハルカはウイルス斑紋形成にも抵抗性を示すかもしれないという考えのもと本研究を開始した。実際、今年度の研究により本可能性を支持する興味ある結果が得られた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、トヨハルカのSMV斑紋形成抑制について興味ある結果が得られたため、本結果が異なる年度でも同様かどうか、次年度も反復して実験を行う必要が生じた。研究計画では次年度に突然変異粒の発生についても調査する予定であったが、SMV斑紋形成抑制に関する研究に集中し、その反復実験を優先する。それとともに今後は低温着色抵抗性品種であるトヨハルカがなぜSMV斑紋形成にも抑制効果を示すかについて、その分子機構を詳細に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
突然変異粒発生調査のための準備に必要であった研究費を次年度の研究費に繰り越し、次年度研究費と合わせて、トヨハルカのSMV斑紋形成抑制についての反復実験を行うとともに、トヨハルカのSMV斑紋形成抑制の分子機構解明のための実験に使用する計画である。
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