2012 Fiscal Year Research-status Report
イネ雑種弱勢原因遺伝子HWC1とHWC2の分子相互作用による免疫応答誘導の解明
Project/Area Number |
24580004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 准教授 (10260506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (10305162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生殖隔離 / Oryza / 雑種弱勢 |
Research Abstract |
酵母ツーハイブリッド法によってHWC1タンパク質同士が結合することが明らかになり,さらに雑種弱勢を起こす対立遺伝子ではこの親和性は低下することが明らかになった.これらの実験結果より雑種弱勢を引き起こす対立遺伝子ではHWC1が本来持つ機能が低下していると考えられた.また,発現解析においてHwc2-1とHwc1-1の相互作用はHWC1の発現レベルを上昇させ,HWC2の温度応答性を低下させていることが明らかになった.弱勢を生じた雑種においてHWC1の発現レベルが上昇していたということはHWC1が自分自身の発現レベルの維持に関与している可能性を示唆するものであった. さらに,HWC1の機能を解明するためにTilling法により突然変異体の選抜を試み2728系統中26系統で変異を検出した.コード領域で変異がみられたのは6系統で、唯一表現型に変化が見られた1系統では変異をホモ接合で持つものは致死となったので現在,ヘテロ接合体での維持を試みている. HWC1の一過性発現による遺伝子の発現抑制について正しく評価するためにはHWC1に影響を受けず恒常的発現をする内部標準遺伝子を同時に一過性発現する必要がある.そこで,35S以外のプロモーターを検討したところユビキチンプロモーターに連結したGFP遺伝子はHWC1によって抑制を受けないことが判明し,今後はこのレポーター遺伝子を内部標準に用いることが可能となった.また,一過性発現実験によって,HWC1とGFPを融合したタンパク質が核に局在することが確認され,HWC1が核局在性タンパク質であることが判明した. さらに,今年度は酵母ツーハイブリッド法によるHWC1結合タンパク質遺伝子の選抜,弱勢緩和遺伝子の解析,Hwc1-1準同質系統作出に関しても研究を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は実験計画に書かれた実験の多くを実施した.HWC1突然変異体を得る努力は困難であったが,維持可能な変異体を得られる可能性がある.また,酵母ツーハイブリッド法によるHWC1同士の結合やHWC1と結合するタンパク質をコードする遺伝子の選抜については期待通りの成果が得られている.雑種弱勢緩和遺伝子については連鎖解析を実施するために交配を行い,分離世代の育成を進めており,Hwc1-1を持つ日本晴準同質系統の作出もBC4F1まで育成されている.また一方で,HWC2プロモーター領域にHWC1が結合するかどうかを検証するクロマチン免疫沈降法による実験は行わなかった.当初の推定では病害抵抗性遺伝子に相同なNB-LRR遺伝子HWC2の発現レベルが変化して雑種弱勢が生じるというものであったが,実際には雑種弱勢においてもHWC2の発現レベルに変化はなかったため,HWC2プロモーター領域とHWC1の相互作用に関する一連の実験を行う理由が失われた.一方,HWC1については雑種弱勢で発現が上昇するという結果となり,むしろHWC1プロモーター領域をHWC1複合体がどのように活性化するのかを調査することが重要であると考えられた. 以上の研究の経緯より平成24年度は着実に研究成果が得られ,今後の発展が期待されると自己評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,雑種弱勢においてHWC1の果たす役割が重要であることが判明したため,HWC1を中心に研究を展開する.雑種弱勢と関連するHWC1の抑制対象遺伝子を見つけることが本質的に重要である.当面は,HWC1のHWC1自身への制御について調査を行う.HWC1のプロモーター領域にGUS遺伝子などのレポーター遺伝子を接続してHWC1と共に一過性発現し,レポーター遺伝子の発現量によってHWC1遺伝子の発現抑制効果を調査する.HWC1プロモーターにHWC1自身が影響することが明らかになれば,さらにクロマチン免疫沈降法によってHWC1プロモーター領域へのHWC1複合体の結合を調査する.次に,Tilling法で得られたHWC1変異体自殖種子を播種し、HWC1の遺伝子型と、表現型、HWC1とHWC2の発現量を調査する.特に,雑種弱勢と同様にHWC1の発現量が上昇しているかどうかに注目し,HWC1のHWC1自身への制御について情報を蓄積する.さらに,HWC1変異体において網羅的発現解析を行い,HWC1がイネの発生において果たす役割と雑種弱勢との接点を探索する。また,HWC1同士の複合体形成についてはこれまでに用いた酵母ツーハイブリッド法に加えてBiFC法などによって確認を行う. 次に,HWC1はHWC2と直接結合していないという結果が酵母ツーハイブリッド法によって得られているので,HWC1やHWC2と複合体を形成するアダプター分子の探索を行う必要がある.そのため,平成24年度の実験を継続し,酵母ツーハイブリッド法により、HWC1やHWC2と結合するタンパク質を発現するcDNAクローンの探索を継続する. さらに,雑種弱勢の発現に影響を与える雑種弱勢緩和遺伝子の連鎖解析を進め遺伝子の単離への条件を整える.また,日本晴背景でHwc1-1の準同質遺伝子系統作出へ向けて戻し交雑を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を実施するにあたり,マイクロピペッターのチップやマイクロチューブ,PCR用のプレート等のプラスチック消耗品,PCRで用いるプライマーとしてのカスタム合成DNA,緩衝液,測定用の基質,植物や菌を培養するための培地や抗生物質などの試薬,培養土,遺伝子導入用のマイクロセルや金コロイド,パーティクルガンの消耗品などの器具類,データ保存,輸送のためのCD-R, USBメモリなどの物品費に最も多く支出する.また,研究の発表のための投稿料,英文校閲料,学会発表のための旅費,分担者と研究打ち合わせのための旅費に支出する.また,HWC1突然変異体の網羅的発現解析を行う場合は,解析委託料として30万円程の経費を必要とする.また,実験補助として謝金も10万円程支出を予定である.
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Research Products
(2 results)