2013 Fiscal Year Research-status Report
イネ雑種弱勢原因遺伝子HWC1とHWC2の分子相互作用による免疫応答誘導の解明
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24580004
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 准教授 (10260506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (10305162)
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Keywords | 生殖隔離 / 雑種弱勢 / イネ / Oryza / 遺伝子相互作用 |
Research Abstract |
雑種弱勢原因遺伝子HWC1と相互作用する因子をYeast Two-Hybrid法を用いて探索し、HWC1タンパク質と結合するタンパク質をコードする遺伝子の候補が17個検出された。そのうち核に存在しHWC1と相互作用する可能性のあるものとしてWD40タンパク質やGTPase 活性化タンパク質などが含まれていた.また、HWC1の機能解析のため、Tilling法によりHWC1変異体を選抜したところ、538番目のアミノ酸残基がAlaからThrに置換された変異体(hwc1-A538T)が得られた.この変異体の,草丈は65~98cmと個体差が見られ、花粉稔性は70%以下、稔実率は12%~42%であった。表現型に幅があったため現段階ではアミノ酸置換と表現型の関連性は不明である。さらにHwc1-1を持つJamaicaにHwc2-1がTos17の挿入により機能を失った日本晴の変異体NC1670を戻し交雑して得られたBC4F2の生育を調査した.播種後30日の草丈ではHwc1-1ホモ型とヘテロ型・hwc1-2ホモ型の間に有意差があったが,播種後163日の草丈では、有意差は見られなかった。これらの結果からHwc1-1が初期生育に負の影響を与えていることが示唆された。 一方HWC2と相互作用する因子についてもYeast Two Hybrid 法を用いて探索した.その結果,6つの遺伝子が検出された.そのなかには,熱ショックタンパク質やβ-1,3-エンドグルカナーゼといった病害抵抗性に関係するタンパク質が含まれた. また,日本晴とJamaicaの受精卵をγ線照射したことにより得られた雑種弱勢緩和個体の後代とKasalathとの交配を行い,緩和の原因遺伝子のマッピングを試みた.F1では弱勢の緩和を示す個体は現れず, Kasalathの遺伝的背景では緩和遺伝子が働ないと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HWC1やHWC2タンパク質と相互作用する因子の候補を見つけることが出来た.しかし,HWC1とHWC2の相互作用の仲立ちをする因子についてはまだ明らかにすることが出来なかった.HWC1の突然変異体を選抜することができたため,今後のHWC1機能解明に期待が持てる.HWC1-1の準同質系統を使ってHWC1-1の表現型の解明を行った.また,準同質系統の戻し交雑も順調に世代を重ねている.弱勢緩和遺伝子についてはマッピングの試みは成功しなかったが,遺伝的背景が重要であることが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
Tilling法によって得られたHWC1の突然変異体hwc1-A538Tの表現型を調査するために平成25年度に得た雑種を播種しF1自殖種子を得る.また,Tilling法は1系統に非常に多くの突然変異が含まれるため,戻し交雑を行い,hwc1-A538T以外の突然変異を減らした系統を作成する. また,Tilling集団から選抜された残りの系統についてもさらにHWC1変異体の選抜を続ける. HWC1-1の準同質系統作成については,世代更新を行いBC6F1の作出を行う.また,NC1670を日本晴と戻し交雑し平成26年度はBC4F1を作出し, hwc2-2の準同質系統化を進める. 弱勢緩和遺伝子のマッピングについては,Hwc1-1hwc1-1, hwc2-2hwc2-2の後代にT65を交配する (またはhwc1-2hwc1-2 Hwc2-1 hwc2-1の後代にJamaicaを交配する)ことで,KasalathとT65やJamaicaの多型情報に基づき,弱勢緩和遺伝子(とKasalathがもつ弱勢緩和を抑制する遺伝子)の連鎖分析を行う.鹿児島大でカサラスと日本型とのDNA多型を用いた連鎖分析のための交配を行い,茨城大で後代検定ならびにJamaicaへの戻し交雑材料の弱勢の評価を行う.弱勢の量的な評価は温度の制御されたファイトトロンで行う.また,平成25年度に作成した弱勢緩和系統とJamaicaの戻し交雑集団を栽培し,緩和遺伝子の遺伝様式について調査を行う. また,平成26年度にはT65との交雑集団を作出する. 雑種弱勢個体ではプラスチドのチラコイド膜関連の遺伝子発現が低下していることが明らかになった.遺伝子発現の低下がプラスチドの個数の減少によるかどうかを検証するためプラスチドゲノムのコピー数を測定し,この数を目安としてプラスチドの状態と雑種弱勢の関連性を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた物品の購入が安価に済み,端数が生じた. 残金は次年度に支給される研究費と合わせてDNA合成酵素の購入などに使用する.
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