2013 Fiscal Year Research-status Report
イネにおける全3雑種弱勢現象の多様性と普遍性の遺伝育種学
Project/Area Number |
24580009
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (10305162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 准教授 (10260506)
手塚 孝弘 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (20508808)
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Keywords | 生殖隔離 / 温度反応 |
Research Abstract |
1. HWA1, HWA2遺伝子の候補領域:H24年度に選抜した組換え型と検定材料との交雑後代を水田に展開し,HWA1, HWA2の遺伝子型を判定した.HWA1は日本晴のPseudomelecule 4における25,635―25,698 kbpの範囲に座乗し,HWA2は25,462―255,76kbpの範囲に座乗した.Hwa1-1をもつ品種A.D.T.14とHwa2-1遺伝子をもつP.T.B.7の全ゲノム配列を次世代シークエンサーで解読し,候補領域を抽出して解析を行った.HWA1遺伝子の候補遺伝子は,弱勢を起こさない正常遺伝子をもつ日本型品種 日本晴に対して複数の塩基変異が見出された.日本晴でHWA2の候補領域には病害抵抗性遺伝子ホモログが見出されていたが,P.T.B.7では対応する塩基配列がほとんど欠失していた. 2. HWA1, HWA2の分布:世界イネコアコレクションと両遺伝子の検定系統を交配し,雑種種子を得た. 3. 新たな雑種弱勢現象の遺伝子分析:アジアの野生イネとオーストラリアの野生イネの雑種第一代はやや緩やかな雑種弱勢現象を呈する.三系交雑集団を育成し,原因遺伝子の連鎖分析を行った結果,オーストラリアの野生イネ側の原因遺伝子は第7染色体に座乗した. 4. 生理学的解析:P.T.B.7とA.D.T.14の雑種を両親とともに28℃または34℃で栽培した.28℃では雑種は葉の黄化,葉のSPAD値の低下,分げつ数の減少が見られたが,草丈と葉齢は両親と変わらなかった.また,最大根長,総根長,根の乾物重を測定したが,播種後60日目の総根長は両親よりも短い傾向があった.雑種を34℃で栽培すると,葉の黄化のタイミングは28℃と同じでSPAD値の低下も抑えることができないが,分げつ数は28℃よりも多くなった.また,28℃と比べて,34℃での根の乾物重は変わらないが,総根長は長くなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.HWA1, HWA2の分析:高密度連鎖解析ならびに次世代シークエンサーによる解析によって遺伝子が座乗する領域の情報を入手することができた.また,栽培イネの遺伝的多様性をカバーする品種群セット 世界イネコアコレクションとHWA1, HWA2検定系統の交配を行い,雑種種子を得た.雑種種子を育て,弱勢遺伝子の分布を明らかにすることで,次年度,遺伝子の特定に寄与する 2. 新たな雑種弱勢現象:W-1, W-2によって引き起こされる雑種弱勢現象の再現には成功しなかったが,別の雑種弱勢現象の解析を進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1. HWA1, HWA2遺伝子の同定:それぞれの遺伝子をもつイネ品種のFosmid ゲノミックDNAライブラリーを作成し,本年度の次世代シークエンサーによる解析結果を基に候補遺伝子をもつクローンを選抜する.クローンの塩基配列を解読し,候補遺伝子を絞り込むとともに候補遺伝子の形質転換体を作成し,相補性検定を行う. 2. HWA1, HWA2遺伝子の分布:昨年行った世界イネコアコレクション ×HWA1, HWA2遺伝子の検定系統の雑種第一代を栽培し,両遺伝子の分布を調査する.並行して,世界イネコアコレクションのHWA1,HWA2遺伝子のシークエンスまたは遺伝子周辺DNAマーカーのハプロタイプ分析を行う. 3. 新たな雑種弱勢現象:アジアの野生イネとオーストラリアの野生イネとの間の雑種第一代で見出される雑種弱勢現象の原因遺伝子の座乗位置を絞り込む.オーストラリアの野生イネがもつ遺伝子については,遺伝的に遠縁とされるO. rufipogonとO. meridionalisが共通してもつ興味深い遺伝子である可能性があるので,これらの系統の塩基配列を入手し,遺伝子候補領域に共通する遺伝子があるかどうか検討する 4. 弱勢の形態学・生理学的解析:HWA1・HWA2, HWC1, HWC2, 3に書いた雑種弱勢現象の原因遺伝子について,戻し交雑を進めている.これによって遺伝的なノイズが軽減されるため,雑種弱勢に関与する遺伝子の挙動を正確に捉えることができる.戻し交雑中の材料で雑種弱勢を起こす個体と起こさない個体を供試し,形態分析ならびに関連遺伝子の発現解析を行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Fosmid genomic DNA library作成ならびに選抜クローンのシークエンスに関する実験ができなかったこと,遺伝子の発現解析を 遺伝的背景の揃う戻し交雑後代で分析(H26年度予定)することにしたので,529,120円余った. Fosmid genomic DNA library作成ならびに選抜クローンのシークエンスに関する実験ができなかったこと,遺伝子の発現解析を 遺伝的背景の揃う戻し交雑後代で分析することにしたので,529,120円余った.今年度はこれらの実験を中心に進める予定である.高額機器の購入予定はない.
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