2012 Fiscal Year Research-status Report
輪作へのダイズ導入による土壌の窒素供給能の変動とその持続性
Project/Area Number |
24580019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岸 順子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60191219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 謙介 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80391431)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食用作物 / 土壌肥沃度 / 作付体系 / 団粒 / 土壌微生物 |
Research Abstract |
土壌の可給態窒素として硝酸態窒素に注目し、ダイズとトウモロコシの生育期間中の土壌中の硝酸態窒素含有率を比較した。そして、土壌の物理的・生物的性質の調査を網羅的に行い、硝酸態窒素含有率との関連性について検討した。さらに、通常の根粒を着生するダイズ(エンレイ)と根粒を着生しないダイズ(En-1282)の比較、ダイズ栽培後の土壌の性質、肥沃度の異なる2種類の土壌(黒ボク土、赤土)の比較についても試験を行った。 その結果、作物栽培区の収穫期の全窒素含有率は、生育が進むにつれて減少傾向だった。一方で粒肥大盛期から収穫期の土壌硝酸態窒素含有率は休閑区に比べて増加し、増加の割合はエンレイ>En-1282>トウモロコシの順で高く、したがってこの順で土壌窒素の無機化を促進していると考えられた。収穫期の硝酸態窒素含有率も同様の順番であった。また、窒素固定を行わないEn-1282でもトウモロコシより高かった。収穫期の土壌の団粒構造の破壊の程度とTotal SIRの増加の割合は、ダイズのほうがトウモロコシよりも高かった。これらのことは、ダイズが土壌団粒の破壊と微生物バイオマスの増加を通して土壌窒素の無機化を促進していることを示唆している。三相分布と硬度については、土壌窒素の無機化との関連性は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったマメ科-ダイズ-栽培が土壌に与える影響と後作作物におよぼす影響について、網羅的に調査した結果、焦点が絞られてきた。すなわち、ダイズ栽培が、土壌中の窒素環境を中心としたいわゆる肥沃度を高めることによって後作作物の生育を高める効果があるのか、それとも何らかの他のプロセスを介して後作に影響するのかという点に関して、後者であることが示唆された。ダイズ栽培は、ダイズ自身が多量の窒素栄養をその生育に必要としており、土壌肥沃度、特に窒素肥沃度を高める作用を持つのではないこと、そして、土壌中に含まれているが植物体が利用しにくい難溶性の窒素を、植物体が利用できる可給態に換えることが示唆された。このことは土壌を肥沃化するのではないが、後作作物に影響し、その作物の生長を促進する可能性がある。 したがって、当初の目的から焦点を絞ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度得られた結果である、ダイズ栽培は土壌中の難溶性窒素を可給態に換えること、必ずしも土壌中の全窒素含量を増加するのではないこと、そしてそれが後作の作物の生長に影響することについて、再度圃場試験を行って確認すること、特に後作作物の生長については再試が必須であると考えることから、トウモロコシの後作と比較検討しながら、後作である冬作について再試・検証を行う。また、昨年度の結果から、ダイズが土壌中の可給態窒素を増加させるプロセスとしてあげられた団粒構造の破壊と土壌微生物相の改変について再試を行う。根量が比較的少ないダイズが団粒を破壊するメカニズムについては実験室的な検討を行う必要があると考えており、最初に小規模なポット栽培を行って再現を試み、系を作成する。その後、根からの滲出物などの解析と、おそらくそれに関わっていると推定している微生物相の解析を行う予定である。その具体的な方法については現在検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
圃場試験およびポット試験の系の確立、窒素分析・微生物相の解析などの分析に使用する消耗品を中心として使用する。 また、昨年度得られた結果の公表のため、英文校閲などに使用する。
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Research Products
(1 results)