2013 Fiscal Year Research-status Report
輪作へのダイズ導入による土壌の窒素供給能の変動とその持続性
Project/Area Number |
24580019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岸 順子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60191219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 謙介 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80391431)
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Keywords | 食用作物 / 土壌肥沃度 / 作付体系 / ダイズ / 団粒 / 土壌微生物 |
Research Abstract |
作付体系の中にマメ科作物を導入すると、後作の作物、特にイネ科作物、の生育が良くなることが経験的に知られてきた。しかし、近年、実際には窒素固定の寄与は高くない、あるいはダイズ導入により土壌の窒素肥沃度が低下するという報告がある。前年度の試験では、畑土壌の可給態窒素である硝酸態窒素について、休閑した畑と、ダイズとトウモロコシの生育期間中および栽培後とを比較検討した結果、ダイズを栽培すると土壌中の硝酸態窒素が増加すること、それはダイズ栽培が団粒の破壊あるいは土壌微生物バイオマスの増加を促進することによって、土壌の有機態窒素の無機化を促進している可能性が示唆されていた。その後、今年度にかけて当該圃場に後作として無施肥でオオムギを栽培し、生育と窒素吸収量について検定した結果、概ね、ダイズ栽培によって作物の利用可能な窒素が増え、成長が促進されることが示された。今年度は、異なる圃場で再試を行った結果、無機態窒素については概ね前年度と同様の結果が得られ、確認することができた。土壌窒素の放出は団粒構造の破壊を伴っていることが示唆されていたが、それについてもほぼ追試することができた。微生物バイオマスに関しては現在試験続行中である。 これらの結果は、ダイズ栽培によって土壌中の窒素肥沃度が増加するのではなく、作物の利用が難しかった土壌窒素を利用可能な形に無機化することを示唆している。が、根粒が固定した窒素は土壌中に残存することは予想されることからそれについて定量的に見積もる必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったマメ科-ダイズ-栽培が土壌に与える影響と後作作物におよぼす影響について、初年度に網羅的に調査した結果について、後作オオムギによって土壌肥沃度の検定を行うと共に、異なる圃場において再試を行った。その結果、示唆された内容について、微生物バイオマスに関する試験を除いて、概ね追試することができた。ダイズ自身が多量の窒素栄養をその生育に必要としており、土壌肥沃度、特に窒素肥沃度を、必ずしも高める作用を持つのではないこと、そして、土壌中に含まれているが植物体が利用しにくい難溶性の窒素を、植物体が利用できる可給態に換えることが示された。しかしながら、根粒非着生系統と着生系統にはそれらの効果に明らかに差が認められ、それは根粒による土壌への窒素付加について見積もる必要性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の圃場試験で、ダイズ栽培は土壌中の難溶性窒素を可給態に換えること、必ずしも土壌中の全窒素含量を増加するのではないこと、そしてそれが後作の作物の生長に影響することは確かめられた。が、根粒の着生・非着生による差異について再度圃場試験を行って定量的に確認することが必須である。また、後作作物については現在オオムギが生育中なので、この生長については今後調査・確認する予定である。また、ダイズが土壌中の可給態窒素を増加させるプロセスとしてあげられた団粒構造の破壊については追試できたが、土壌微生物相についてはデータにバラツキが多いこともあり、再試を行う。根量が比較的少ないダイズが土壌団粒を破壊するメカニズムについては、それに関与している可能性の高い土壌微生物相あるいは土壌動物相の解析と並行して行う予定である。 本年はこれらの成果を取りまとめて公表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実施予定であった微生物バイオマス測定について、データのバラツキが多く安定しないなどの理由により、得られたサンプルの測定がまだ終了していないため。 新年度において微生物バイオマス関係の測定方法の見直しを行って、保存サンプルについての測定を迅速に行っていく予定である。そのための薬品等の購入に使用する。
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