2013 Fiscal Year Research-status Report
アイスプラントの表皮塩集積細胞の形成と機能を制御する分子メカニズム
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24580025
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
東江 栄 香川大学, 農学部, 教授 (50304879)
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Keywords | アイスプラント / 塩生植物 / 耐塩性 / トライコーム / ブラッダー細胞 |
Research Abstract |
本研究は,塩生植物アイスプラントの塩集積細胞(ブラッダー細胞)の形成に関わる分子遺伝学的メカニズムを明らかにしようとするものである。ブラッダー細胞はトライコームの一種と考えられるため、シロイヌナズナのトライコームとワタの繊維の形成に関わる遺伝子と相同性の高いアイスプラントの遺伝子を単離し、その発現をブラッダー細胞をもたない変異体と野生株とで比較した。野生株で強く発現していたGL2及びMYB2、変異株で強く発現していたCPC及びTRYの塩基配列全長を決定した。また、サプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)法により野生株から単離された2つの遺伝子(WM10及びWM28)及び変異株から単離された5つの遺伝子(MW3、MW11、MW21、MW29、MW31)の塩基配列全長を決定し、機能を推定するとともにこれらを組み込んだ発現ベクターを構築した。野生株と変異株とで発現量が大きく異なったWM28については、2種類のアイソフォームがあることを明らかにし、それぞれ全長を単離した。また、プロモーター領域を含むDNA断片を単離し、ゲノム上の変異部位を同定した。 構築したベクターは、シロイヌナズナ及びアイスプラントに導入し、得られた形質転換体のトライコームを観察するが、アイスプラントでは効率的な形質転換法が確立されていないため、胚軸、幼苗生長点、腋芽、種子を外植体とし、アグロバクテリウムを介して遺伝子の導入を試みたが、これらの外植体からは形質転換体は得られなかった。根を外植体として用いることとし、根外植体から地上部を再分化させる培養条件を検討した。また、シロイヌナズナで地上部の形成に関与することが報告されている遺伝子(ARR5、CUC3、CUC2、STM、ESR1、及びESR2)の発現を培養開始後日数別に調査した。その結果、STMだけが発現していないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、1.形質転換体を用いた解析及び2.ブラッダー細胞形成関連遺伝子のプロモーターの解析を行うことを目的とした。1.については、単離した遺伝子の機能を調べるために、平成24年度に単離した遺伝子のcDNA全長を35Sプロモーターに連結した導入ベクターを構築した。これをシロイヌナズナ及びアイスプラントに導入し、得られた形質転換体の表皮細胞の微細構造を、実体顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて観察する。シロイヌナズナについては既報に準じた方法で形質転換体を作出することができたが、アイスプラントについては、これまで開発した方法では形質転換できなかったため、新たな形質転換法の開発を試みた。胚軸、幼苗の生長点、腋芽、及び種子にアグロバクテリウムを感染させたところ、いずれも遺伝子の導入は確認されなかった。他種でよく用いられる根を外植体に用いた方法を試すために、根から地上部を再分化させる培養条件を検討した。あわせて、地上部の形成に関連することが示唆されている遺伝子(ARR5、CUC3、CUC2、STM、ESR1、及びESR2)の発現を培養開始後日数別に調査し、STMだけが発現していないことを明らかにした。2.ブラッダー細胞形成関連遺伝子のプロモーターの解析については、野生株と変異株とで発現量が大きく異なったWM28のプロモーター領域を含むDNA断片を単離し、変異の起きている部位を明らかにした。 このように、ブラッダー形成遺伝子及びそのプロモーターの解析及び導入ベクターの構築については進展がみられたが、アイスプラントの組み換え体は作成できなかった。ただし、地上部形成関連遺伝子の解析から、アイスプラントの地上部が再分化されない要因を明らかにすることができた。これは、今後の組み換え体の作出にとって大きな期待をもたせる成果である。以上を勘案して,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
単離した遺伝子を発現ベクターに組み込むことができたので、今後はブラッダー細胞欠損変異体に導入してブラッダー細胞の回復をみる相補性試験を行うか、あるいは、組み換え技術の確立した他種植物に導入して得た形質転換体の形態観察から遺伝子の機能を明らかにする。具体的には、平成25年度に構築した、シロイヌナズナのトライコーム関連遺伝子、ワタの繊維形成関連遺伝子、機能未知遺伝子等の遺伝子を含む融合遺伝子をアイスプラントの変異体及びシロイヌナズナに導入する。形質転換体の表皮細胞(特にトライコーム)の微細構造を、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡で観察し、遺伝子導入による形態の変化を観察して遺伝子の作用を明確にする。アイスプラントについては、昨年度の研究でその発現量が抑えられていることが明らかになった地上部形成関連遺伝子(STM)を高発現させて地上部を再分化させる系を構築し、形質転換体の作出を試みる。根を外植体としたカルスに外来遺伝子を導入できることは確認されているので、根を外植体として遺伝子を組み込み地上部を再分化させる。また、変異株と野生株から単離したRNAについてRNA-seq法による解析を行い、変異株と野生株で存在量の異なるRNA分子を明らかにする。これらの成果をまとめ学会で発表するとともに学術論文としてまとめる。
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Research Products
(7 results)