2012 Fiscal Year Research-status Report
登熟期間中のイネ葉鞘におけるデンプン分解関連酵素遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
24580027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
平野 達也 名城大学, 農学部, 准教授 (30319313)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イネ / 葉鞘 / デンプン代謝 / β-アミラーゼ / α-アミラーゼ |
Research Abstract |
イネ茎葉部、特に出穂期以降の葉鞘におけるデンプン分解において、β-アミラーゼをコードする遺伝子であるOsBAM2とOsBAM3がどのような役割を果たしているのかを解明するため、RNAi法により作出したノックダウン系統を用いて解析を進めた。その結果、OsBAM2のノックダウン系統の葉鞘におけるデンプン含量には野生型とほとんど違いがないこと、またOsBAM3のノックダウン系統では野生型よりも出穂期のデンプン含量が多くなる傾向にあるものの有意な差は認められないことが明らかになった。一方、OsBAM2の過剰発現系統では、出穂期までに葉鞘に蓄積されるデンプン含量が著しく低下した。以上のことから、OsBAM2は葉鞘におけるデンプン分解において機能していることが強く示唆されるが、その単独の発現抑制では、おそらくOsBAM3の作用によってデンプン分解が進むために、デンプン過剰の表現型が現れないと考えられた。現在はOsBAM3の過剰発現系統の育成が完了し、さらにOsBAM2とOsBAM3の両方がノックダウンされた系統の選抜を進めている。 プラスチド局在型β-アミラーゼであることがわかっているOsBAM2とOsBAM3と同様に、プラスチド移行シグナル配列を有すると予想されるOsBAM4とOsBAM5の細胞内局在性の解明を進める計画であった。しかし、これら2つの遺伝子の発現レベルは出穂期前後の葉鞘において、OsBAM2およびOsBAM3を比較して著しく低いことが明らかになった。そこで、計画を変更し、出穂後に発現レベルが上昇するα-アミラーゼ遺伝子であるRAmy2Aについての解析を先に進めることとした。RAmy2Aのノックダウン系統を作出するためのRNAiベクターを構築し、そのT1世代の種子採取までが完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OsBAM2とOsBAM3の両方が発現抑制されたノックダウン系統の選抜と育成が遅れている。その理由は、OsBAM3のノックダウンのためにOsBAM3の5’側非翻訳領域を含む配列をRNAiトリガーに用いたが、その領域では効果的なノックダウン系統が得られる確率が低いことが研究を進めて行く中でわかってきたため、RNAiトリガーに用いる配列を3’側非翻訳領域に変更したベクターを再度構築し直したからである。それらのベクターによる形質転換を進めているので、次年度には研究進捗の遅れを取り戻すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に解析を行うことができなかったOsBAM3の過剰発現系統についてはその育成が完了したため、今後その表現型の解析を進める予定である。また、OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統については、両遺伝子の発現が効果的に抑制されている系統の選抜を進めている。そこで、平成25年度では、まずその選抜と選抜した系統の育成を完了し、OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を用いて、葉鞘におけるデンプンおよび糖含量がOsBAM2とOsBAM3の発現抑制によってどのような影響を受けるのかを明らかにする。さらに、葉鞘に限らず、葉身におけるデンプン代謝についても解析する予定である。以上の結果から、OsBAM2とOsBAM3がイネ茎葉部のデンプン分解において果たす役割を明らかにする予定である。 α-アミラーゼ遺伝子、RAmy2Aのノックダウン系統の育成もまた進める。その結果として効果的な系統が得られた場合には、葉鞘におけるデンプン含量の変化を解析し、葉鞘のデンプン分解におけるRAmy2Aの機能についてOsBAM2およびOsBAM3と比較しながら解明する予定である。 出穂後のデンプン含量の減少が日本型よりも著しく速く生じるインド型品種において、その原因となる遺伝子の同定を進める。具体的には、上記β-およびα-アミラーゼ遺伝子に加えて、α-グルカンリン酸化酵素遺伝子であるOsGWD1や、イソアミラーゼ遺伝子であるOsISA3などについての発現レベルを品種間で詳細に比較する。その結果から、発現レベルが大きく異なる遺伝子が明らかになった場合には、その遺伝子のプロモーター領域における配列を日本型およびインド型品種間で比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度と同様に、形質転換イネ系統の維持と育成を担当する研究補助員を雇用する。その経費が研究費のおよそ70%ほどを占める予定である。それ以外の研究費は、形質転換イネの作出と育成に必要な試薬や培地成分・培土、ならびに遺伝子発現解析を行うためのリアルタイムRT-PCR用試薬などの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)