2013 Fiscal Year Research-status Report
圃場環境操作実験およびNMRメタボロミクスによる水稲代謝応答の解析
Project/Area Number |
24580029
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
関山 恭代 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所・食品分析研究領域, 主任研究員 (60342804)
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Keywords | 食用作物 / NMRメタボロミクス |
Research Abstract |
本課題では、圃場環境操作実験で栽培されたイネを対象に、核磁気共鳴(NMR) 法による代謝物の網羅的解析(メタボローム解析)を行い、CO2 濃度の上昇や温暖化といった気候変化が、イネの代謝プロファイルにおよぼす影響とその品種間差異を調べることを目的とした。 開放系圃場において、CO2 濃度を増加させたFACE 区(CO2濃度約590 ppm)と対照区(CO2濃度約390 ppm)のそれぞれについて、温暖化を想定し水温をプラス2℃上げた加温区、さらに施肥の効果を検討するための低窒素区を設け、栄養生長期、穂揃い期および登熟期の3点でサンプリングを行った。本年度は、平成24年栄養生長期のコシヒカリおよびタカナリの上位2葉について、リン酸緩衝液抽出物の1H-NMRスペクトルを取得し、主成分分析を行った。全スペクトルを使用した主成分分析では、品種および環境条件の違いによるクラス形成は見られず、葉身と葉鞘、最上位展開葉(第I葉)と第II葉といった、部位や葉齢ごとのクラス形成が認められた。これらのクラス形成には、ショ糖やオリゴ糖といった糖類の寄与が大きく、次いで有機酸の寄与も見られた。葉齢別の主成分分析からは、代謝プロファイルの品種間差異は、第I葉よりも第II葉の方が大きいことが分かった。その他、部位別、品種別に実施した主成分分析においても環境条件の差異によるクラス形成は認められず、栄養生長期の水溶性代謝物のプロファイリングでは、コシヒカリ、タカナリともにCO2濃度や加温、施肥の違いによる大きな変化は生じないことが示唆された。ただしこれらの主成分分析においては、特徴空間が含量の多い糖シグナルに大きく牽引されるため、今後は糖シグナルに該当する変数を削除したプロファイリングを検討し、環境条件の影響を解析する必要がある。同時に、他の成長段階やメタノール抽出物についても解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イネ栄養生長期の代謝プロファイルについて、部位や葉齢、品種間による差異は明らかになったものの、穂揃い期および登熟期の解析には至らず、目的とする環境条件の差異による代謝変化も見出せていない。前年度の結果から、環境条件の変化による代謝変動は非常に小さいと考えられたため、よりよく変動を検出するための代謝物の抽出条件や部位の選定に時間を要した。前年度および本年度の結果により、第II葉において品種間差異がよく観測できることやメタノール可溶性代謝物においてCO2濃度変化の影響が見られることが示唆されたため、今後はこれらを中心に検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、第II葉において品種間差異がよく観測できることやメタノール可溶性代謝物においてCO2濃度変化の影響が見られることが示唆されたため、今後はこれらを中心に検討を進めることで効率化を図る。同時に、環境条件の変化による代謝変動が検出しにくい要因として、NMR法によるイネの代謝プロファイリングでは含量の多い糖シグナルの影響が大きく、糖以外の成分変動が検出しにくいことがあげられる。今後は糖シグナルに該当する変数を削除したプロファイリングを検討し、比較的微量な成分について、環境条件の影響を解析する必要がある。
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