2012 Fiscal Year Research-status Report
水稲有機栽培における米ぬか散布のコナギ抑草機構の解明
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24580032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
内野 彰 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター生産体系研究領域, 上席研究員 (20355316)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | コナギ / 米ぬか / 芳香族カルボン酸 / 種子休眠 |
Research Abstract |
本年は1)各種環境条件における抑草効果の評価として、時期および土壌とコナギ種子休眠性が抑草効果を与える影響を評価した。また2)抑草効果を示す候補物質の探索として、室内実験でモデル的に米ぬか混入土壌溶液を作成し、その土壌溶液のコナギ発芽抑制効果と土壌溶液中の芳香族カルボン酸濃度との関係を調査した。また芳香族カルボン酸類の水溶液中でコナギ発芽試験を行い、各化合物の発芽抑制効果も調査した。 米ぬか散布のコナギ抑草効果は土壌によって効果が大きく異なったが、ほとんどの土壌で時期が遅いほどコナギ抑制効果が高まる傾向が認められた。種子休眠性の影響については、同じ発芽指数を示す場合でもコナギ抑草効果が大きく異なったため、その影響は明らかでなかった。 コナギ抑草効果を示す候補物質として、有機物混入後の土壌中に生成される水稲根阻害物質として報告のある芳香族カルボン酸類を解析した。米ぬかの効果が異なる土壌を用い、米ぬか散布後に抽出した土壌溶液中で発芽試験を行うとともに安息香酸、2-フェニルプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸および4-フェニル酪酸の濃度を測定した。この結果3-フェニルプロピオン酸の濃度が土壌溶液間で最も大きく変動し、3-フェニルプロピオン酸が15μM以上の濃度では発芽率が0%となる一方で、検出されなかった土壌溶液では発芽率が70%以上の高い値を示した。安息香酸もやや似た傾向が認められたが、2-フェニルプロピオン酸と4-フェニル酪酸では明らかな傾向が認められなかった。4種類の芳香族カルボン酸溶液のコナギ発芽抑制効果は、3-フェニルプロピオン酸の発芽阻害活性が最も高く、50μMで20%にまでコナギ発芽率を低下させた。しかし、10μMの3-フェニルプロピオン酸濃度では発芽阻害活性がほとんど見られず、土壌溶液の発芽阻害効果を3-フェニルプロピオン酸だけで説明することは出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)各種環境条件における抑草効果については、遅い時期における抑草効果の向上が、コナギ種子の休眠性の推移と強く関連しないことが明らかとなり、抑草効果と種子の休眠性との関係については当初の予定より早く示唆が得られたと考える。また2)抑草効果を示す候補物質の探索では、当初の計画では網羅的に有機酸等を調べる予定であったが、予定よりも早く芳香族カルボン酸類の中にコナギ発芽抑制活性の高いものが見つかった。さらに平成25年度に行う予定であった3)コナギ種子のバイオアッセイについては、1年前倒しで芳香族カルボン酸類で既に実験を開始しており、3-フェニルプロピオン酸で有益なデータが得られている。候補物質が実測値の範囲でコナギの発芽を抑制しないのは想定していたとおりであり、今後、この類似化合物との混合溶液や二価鉄等との相乗的な作用を仮定することで、候補となる化合物群を比較的早く同定できる可能性がある。一方、温度条件や光条件を厳密に管理する実験は出来ておらず、平成25年度以降に温度条件や光条件と抑草効果との関係を明らかにする必要がある。また屋外試験における土壌溶液における芳香族カルボン酸類の定量はまだ進んでおらず、これも平成25年度以降に解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
コナギ種子の休眠性が抑草効果に与える影響については、当初の計画では各種の休眠状態の種子を用いて試験を行う予定であったが、平成24年度の結果から、屋外条件ではコナギ種子の休眠程度が大きな影響を与えていない可能性が示唆されている。このことから、種子の休眠状態と抑草効果との関係を調べる試験は縮小し、温度と光の影響について年次反復を調査する。またその試験の中で土壌溶液を定期的に採取し、芳香族カルボン酸類を中心に各種有機酸の定量を試みる。これにより屋外試験における抑草効果とEC値との関係に加え、芳香族カルボン酸濃度との相関関係が明らかになる。コナギ種子の発芽抑制に関するバイオアッセイについては、芳香族カルボン酸類を中心に、類似化合物との混合溶液や二価鉄等の無機イオンの添加などの効果を調査し、複数の物質の複合的な影響について試験を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額5,035円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度の研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。 具体的には、屋外ポット試験では屋外ポット試験では水稲育苗にかかる資材費、肥料、水田土壌、米ぬか等を必要とするため、これらをポット試験資材費として10万円の支出を予定する。芳香族カルボン酸類定量のための土壌溶液を採取するための採取管とHPLCを用いた分析に使う試薬、カラム、ヘリウムガスなどは土壌有機化合物分析費として40万円を予定する。バイオアッセイに使用する試験管、寒天培地等はバイオアッセイ資材費として10万円を予定する。日本雑草学会等で成果の発表を行うための旅費として10万円を予定する。土壌無機成分分析費として10万円、芳香族カルボン酸類などの土壌有機化合物分析およびポット試験等の補助として、研究補助員雇用のため50万円を予定する。
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