2013 Fiscal Year Research-status Report
水稲有機栽培における米ぬか散布のコナギ抑草機構の解明
Project/Area Number |
24580032
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
内野 彰 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター生産体系研究領域, 上席研究員 (20355316)
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Keywords | 水筒有機栽培 / コナギ / 米ぬか / 芳香族カルボン酸 |
Research Abstract |
本年は、各種環境条件における抑草効果の評価として、土壌、時期および遮光が抑草効果に与える影響を評価した。また抑草効果を示す候補物質の探索として、室内実験で各種芳香族カルボン酸水溶液の希釈系列を作り、コナギの発芽試験を行って、各化合物の発芽抑制効果を調査した。 土壌の影響については、水稲有機栽培を5年間行った土壌と2年間行った土壌とをワグネルポット試験で比較し、5年間行った土壌で高い抑草効果が得られた。この結果は圃場における雑草抑制効果とよく一致した。時期の影響については、移植時期の早い試験区で高い抑草効果が認められ、本年はこれまでと異なる結果となった。この結果を過去の気象条件も含めて解析したところ、降水量が関係している可能性が考えられた。すなわち、これまでは米ぬか処理後の1週間に10-30mmの降雨があったが、本年の早い移植時期の試験区では処理後の降雨が全くなかった。おそらく、水深が浅いこと、あるいはオーバーフローの無いことにより抑草効果が高まったものと考えられた。遮光の影響については、前年までと同様に遮光によって高い抑草効果が認められたが、遮光の効果も水深あるいはオーバーフローとの関連性をもとに再検討する必要が考えられた。 各化合物の発芽抑制効果については、5種類の芳香族カルボン酸についてコナギの発芽抑制効果を調査したが、本年産および前年産のコナギ種子の発芽率が試験反復間で大きく変動したため、前年までの試験結果の再現性も得ることができず、実験が進展しなかった。 以上、本年度の結果から、水稲有機栽培の連作期間が長い土壌中に、想定される抑草物質が多く存在する可能性が示唆され、一方で抑草効果は水深あるいはオーバーフローの影響を強く受ける可能性が示唆された。コナギの発芽試験については、再現性の高い実験系の確立が必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年は土壌溶液中の芳香族カルボン酸類の定量分析を行う予定であったが、分析装置のGC-MSが故障し、代替分析機器も手配できなかったため、分析が全く進展しなかった。コナギの発芽試験においても、材料に用いたコナギ種子の発芽率が試験反復間で大きく変動したため、再現性のある実験系の確立から行うこととなった。一方、前年までの試験で休眠性が抑草効果に大きく影響しないことが示唆されており、また本年の結果では光条件について水深やオーバーフローとの関連性が示唆されたことから、抑草効果に影響する環境要因の解析は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、水深やオーバーフローを環境要因の処理区として加えて、抑草効果に与える温度と光の影響の年次変動を調査し、米ぬか処理を行った後の土壌溶液の解析と合わせて抑草機構の解明を進める。コナギの発芽試験については、文献調査で試験溶液中の微生物の存在が影響している可能性が考えられたため、無菌条件での発芽試験系などを検討し、再現性のある実験系を確立すると共に、芳香族カルボン酸類の効果および2価鉄等との相乗効果を調べる。土壌溶液中の分析については、機器の修理が進まない場合は、外部委託による分析を検討する。最終的には、土壌溶液の分析値とコナギ発芽試験の結果から実証試験を行い、抑草機構の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米ぬか散布後の土壌溶液中に存在する芳香族カルボン酸類の定量分析を予定していたが、分析装置のGC-MSが故障したために分析にかかる試薬を購入しなかったことから、残額が生じた。 次年度使用額484,614円は、25年度に予定していた土壌溶液中の芳香族カルボン酸類の定量分析を行うための分析試薬の購入に使用し、次年度に請求する研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。
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