2013 Fiscal Year Research-status Report
熱ショックが園芸作物に誘導する抗菌反応のメカニズム解明
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24580035
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 達雄 茨城大学, 農学部, 准教授 (20451669)
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Keywords | 国際情報交換 / インドネシア / 熱ショック / 植物病害獲得抵抗性 |
Research Abstract |
1.全身獲得抵抗性(SAR)と同時に誘導される別経路の病害抵抗性が存在する可能性の検証:トマトを用い,同一植物内に複数存在する病害抵抗性関連遺伝子PR1a群のプロモーター領域のシーケンスを解析したところ,熱ショックエレメント特有のモチーフを有する遺伝子と有しない遺伝子の双方が存在する可能性が認められた.次にこの配列の有無が熱ショック処理後の病害抵抗性の発現に関与する可能性を,灰色かび病接種試験によって検証し,熱ショックによる抵抗性誘導がSARとは独立して存在する可能性が示唆されたが,結論を出すには再現性を十分確認する必要がある.現状では少なくとも熱ショック後のサリチル酸の増加とPRタンパク質遺伝子の発現タイミングを精査した結果,熱ショックによる抵抗性誘導をSARだけで説明するには矛盾があることを見いだしている. 2.熱ショックにより葉面に分泌される低分子抗菌物質の検索と同定:前年のイチゴに引き続きハーブを用いて熱ショック後に放出されるテルペノイド類など比較的低分子の物質に着目し,前年度に有望な手法と判断されたGC-MSにより,揮散する物質の検出を行った.また,複数の候補物質については標準品を用いて同定を行うとともに抗菌活性の評価を行った.この結果,ベータセドレンやパラシメンが同定され,それらの揮発物は灰色かび病の菌糸伸長を抑制することが明らかになった.さらに,リアルタイムRT-PCR法によりそれらの合成に関連する遺伝子の発現状況を解析したところ,その発現レベルは熱ショックにより影響を受けることが示唆されたが,時系列分析の必要性も認められた.これらのことからおおまかな合成系や消長が明らかになり抗菌反応のメカニズムの存在が明らかになった.これらの新規性,有望性が認められたので,「揮発性成分の放出促進方法,植物の栽培方法及び栽培システム」の名称で特許を申請した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.全身獲得抵抗性(SAR)と同時に誘導される別経路の病害抵抗性が存在する可能性の検証:当初計画とは異なる手法で別経路の病害抵抗性が存在する可能性を支持する結果が得られ,一部は公表したが,熱ショック転写因子阻害剤やSAR誘導剤との併用処理等,いくつかの実験について未だ十分な再現性が得られていないため,自己評価による当初目標に対する達成率は60パーセント程度とする. 2.熱ショックにより葉面に分泌される低分子抗菌物質の検索と同定:熱ショックを施した後に増加する具体的な抗菌物質が分離,同定され,またその具体的な生成経路についても解明しつつある.さらに詳細な調査を行う必要はあるが,概ね初期の結果が得られたことから自己評価による当初目標に対する達成率は90パーセント程度とする.
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Strategy for Future Research Activity |
上記2つの小課題については当初に提示した仮説検証に向けて具体的なデータを積み重ねていくことで大きな修正なく目標を達成できると考える.一方,今年度より高分子抗菌物質の分離,同定を予定している.クラシカルな手法で実施可能と思われるが目下の問題はマンパワーである.今後は人件費,謝金を活用するとともに海外のカウンターパートとの連携も強化していきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24~25年度に実施課題について小課題「熱ショックにより葉面に分泌される低分子抗菌物質の検索と同定」が順調に進展し,特許申請を行うことができた.このため小課題「全身獲得抵抗性(SAR)と同時に誘導される別経路の病害抵抗性が存在する可能性の検証」について絶対的な実験量が当初見込みより少なくなった. 平成26年度については小課題「全身獲得抵抗性(SAR)と同時に誘導される別経路の病害抵抗性が存在する可能性の検証」ならびに新規小課題「熱ショックにより葉内に生成する高分子抗菌物質の抽出と同定」に対して人件費,謝金を効率的に運用し,さらに研究を加速する予定である.
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Research Products
(7 results)