2013 Fiscal Year Research-status Report
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24580040
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
加藤 淳太郎 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (80303684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神戸 敏成 公益財団法人花と緑の銀行, その他部局等, 副主幹研究員 (00393108)
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Keywords | 三倍体 / 非還元性配偶子 / 異数性配偶子 |
Research Abstract |
日本には三倍体種や、比較的多くの三倍体品種をもつ種があるが、園芸植物的価値が高く低稔性の三倍体植物の育種的利用は少ない。三倍体の育種的利用のために①三倍体の出現機構、②三倍体産出の配偶子パターン、③三倍体から二倍体の復元可否について実績を報告する。 <①三倍体の出現機構>2x×2xによる三倍体形成は、サクラソウ×カッコソウおよびCymbidium属のキンリョウヘン二倍体F1を種子親とした交雑で行い、前者は得られた三倍体雑種中の高DNA含量個体の染色体数が二本過剰と判明した。後者の後代のDNA含量分布は、三倍体が高頻度、五倍体的異数体と二倍体が低頻度となった。4x×2xによる三倍体形成は、プリムラ・シネンシス×ウンナンサクラソウの複二倍体とその自殖四倍体後代に二倍体親種の戻し交雑を行い、四倍体雑種カルスと三倍体をそれぞれが得た。 <②三倍体産出の配偶子パターン>三倍体が形成する配偶子のDNA含量を、センノウ(2n=36)の雄性配偶子は直接的に、Zygopetalumの雌性配偶子はCymbidiumとの交雑由来個体のDNA含量から間接的に各々算出した。前者では、1~2ゲノムのDNA含量間に観察される複数のピークから、12~24本程度の染色体構成の花粉が推測され、自殖後代の染色体数の分布(2n=24~51)を支持した。後者では、3x非還元性配偶子と異数性配偶子が見出され、稔性向上に非還元性配偶子の関与が示唆された。 <③三倍体から二倍体の復元可否> 三倍体種のセンノウ、ヒガンバナ、オニユリより実生を得た。センノウの自殖由来の二倍体相当染色体数を保有する3個体から、花粉稔性が90%を超す個体が得られ、この個体の自殖種子から開花に至った個体の自殖においても結実した。残りの二種では、親個体が二倍体と判明したが、ヒガンバナの1実生から三倍体が見出され、三倍体ヒガンバナから異数体も獲得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
<①三倍体の出現機構>サクラソウ×カッコソウから得られた三倍体高DNA含量個体で見出された二本の過剰染色体について、平成26年春期園芸学会で報告し、減数第二分裂異常の可能性を推測した。Cymbidium属のキンリョウヘンF1を用いた2x×2xの後代のDNA含量分布は、三倍体が高頻度、五倍体的異数体と二倍体が低頻度であったことは、IOS2014で報告し、実生のDNA含量の均一性と、母本のDNA含量との対比から減数第一分裂異常の可能性を推測した。4x×2xによる三倍体形成は、プリムラ・シネンシス×ウンナンサクラソウの複二倍体とその自殖四倍体後代の二倍体親種との戻し交配を行い、四倍体雑種カルスや三倍体が獲得される四倍体系統が見出されたことは、平成26年春期園芸学会で報告した。 <②三倍体産出の配偶子パターン>三倍体センノウの雄性配偶子と倍体Zygopetalum品種の雌性配偶子のDNA含量は、前者が1ゲノム~2ゲノムのDNA含量に対応する異数性配偶子が形成されるのに対し、後者は異数性配偶子と3x非還元性配偶子が品種ごとに異なる頻度で出現し、稔性向上に関与する可能性が示唆された。 <③三倍体から二倍体の復元可否> 三倍体種のセンノウ、ヒガンバナ、オニユリより実生を得た。センノウの自殖由来の二倍体相当染色体数保有3個体から、花粉稔性が90%を超す個体が得られ次世代および次次世代種子が得られた結果と親個体が二倍体と判明したヒガンバナの1実生から三倍体が見出され、また三倍体ヒガンバナから異数体を獲得した結果は、平成26年度に学会発表を行う予定である。 ①は学会発表まで、②は3倍体由来配偶子のタイプの推測、③は平成26年度に学会発表を行う成果がそれぞれ得られたことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
<交雑による三倍体形成のパターン解明> 非還元性配偶子形成とそのタイプの解析について、雌雄どちらの親から非還元性配偶子が供与されたかを推測するとともに、分子マーカーを用いヘテロのマーカーの分離の有無などから、非還元性配偶子形成パターンを特定する。交雑方向性による倍数性調査は、予想される倍数体が取れにくい交雑方向性について、胚珠培養を試みるとともに雄性側の調査を試みる。主に愛知教育大学で行う。 <三倍体植物の稔性配偶子形成能力の解明> 細胞学的な判断での稔性花粉、不稔性花粉の識別とフローサイトメーター測定による判定を継続し、稔性配偶子の特性などを決定する。三倍体植物が作出した配偶子のDNA含量の調査を継続し、DNA含量分布の特性を考察する。本研究は、公益財団法人 花と緑の銀行・中央植物園部が細胞学的観察、愛知教育大学がDNA含量調査を担当する。 <三倍体植物からの稔実性二倍体植物の作出と育種的利用> 三倍体植物から自殖後代を得るためにヒガンバナなどの三倍体植物の自殖と胚珠培養を継続し正常に生育する個体作出が可能かどうかを決定する。二倍体相当の植物体が得られたセンノウについても個体数を増やすことを継続し、二倍体相当植物を選抜する。それらの二倍体植物は、自殖並びに近縁種の交雑で、変異の拡大を試みる。優良形質を保有する個体については特性調査を行う。本研究は公益財団法人 花と緑の銀行・中央植物園部が行い、細胞学的観察は連携研究者である中田政司氏の協力により行う。 上記三項目の成果を総合し、二倍体と三倍体の間での倍数性増減の人為的制御の可能性について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の10402円の余剰は、2月に開催された2nd International Orchid Symposiumに参加するための予算を多めに見積もったために、生じたものである。平成26年度は分子マーカーを利用するので、その薬品購入もしくは、オーストラリアで8月に開催されるIHC2014の旅費の調整等に使用する。 平成26年度の物品費は、25年度と同様に、交配・胚珠培養等材料育成費用、フローサイトメーター、細胞学的観察、分子生物学的手法のための薬品購入費用が主たる使用用途であるが、分子生物学的手法のための購入費の割合が増える予定である。人件費・謝金は、分担者の神戸が通常業務と平行して研究を遂行するのに重要である。その他の予算は、IHC2014での発表が受理されているので、英文発表準備費の使用を予定している。
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Research Products
(3 results)