2012 Fiscal Year Research-status Report
生物微弱発光を利用したモモせん孔細菌病抵抗性の簡易検定法の開発
Project/Area Number |
24580054
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
山口 正己 東京農業大学, 農学部, 教授 (80355370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末貞 佑子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (60391471)
馬場 正 東京農業大学, 農学部, 教授 (80277243)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物微弱発光 / モモせん孔細菌病 |
Research Abstract |
付傷接種試験により、モモせん孔細菌病に抵抗性を有すると判定されたモモ品種‘もちづき’、罹病性と判定された‘あかつき’および‘川中島白桃’の切り取り新梢に対して、せん孔細菌病菌を107CFU/mlの濃度で摂取し、水挿しして室温20℃、相対湿度100%の接種室に置いた。接種はそれぞれ5枝とした。接種後2日、4日、8日後に生物微弱発光装置を用いて、遅延発光量の測定を行った。また、対照として接種を行なわず、水挿しして同様の条件においた無接種区を設けた。接種は、展葉直後要から第5葉までとした。接種室から搬出後、水挿ししたまま、つくば市の果樹研究所から神奈川県厚木市まで搬送し、生物微弱発光測定装置を用い、暗期ゼロ秒条件で光照射後20秒間の遅延発光量を測定した。 遅延発光量は、照射後の経過時間が短いほど大きく、照射から数秒後には著しく低下し、その後ゆっくりとした低下傾向を示した。また、葉位の高いもの(展葉後の日数が短いもの)ほど、初期の遅延発光量が高くなる傾向が認められた。水挿し期間も遅延発光量に大きな影響を及ぼし、期間の短いものほど発光量が大きくなった。 接種葉と未接種葉の発光量を比較すると、全体的には接種用で発光量が大きくなる傾向が認められた。また、‘あかつき’および‘川中島白桃’では、接種後8日を経た葉では接種・未接種間で有意な差が認められなかったが、‘もちづき’では、第2、5葉位で有意差が認められた。最も明瞭な差異が認められたのは、接種から4日を経過したもので、いずれの品種においても、全ての葉位あるいは多くの葉位で接種による有意な発光量の増加が認められた。 このように、せん孔細菌病菌に対する抵抗性の判定を行うためには、データが不足しており、さらに測定を継続する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モモせん孔細菌病の接種により、モモ葉に生理的な反応が生じている可能性があり、それを生物微弱発光現象により確認し、反応強度を評価することにより、抵抗性の判定を行おうとする新たな手法を開発を目指したものである。今回の試験により、モモせん孔細菌病の接種により、モモ葉の生物微弱発光のうち遅延蛍光が増加することが確認された。じゅうらい、このような検討を全く行われていなかったことから、本実験結果は抵抗性判定の新たの手法につながる成果であると考える。 遅延発光量は、測定葉位、水挿し後の時間経過、照射後の経過時間により大きく変動することが明らかになった。即ち、葉位については若い展開陽ほど遅延発光量が多いこと、照射後短時間で発光量が急激に減衰すること、水挿し期間が長くなるほど発光量が減少することが明らかになった。 また、モモせん孔細菌病の接種により、遅延発光量が増加すること、その程度は接種後の経過日数の影響を受け、接種後4日程度で最も未接種葉との差異が顕著となることが明らかになった。このように、本年度の実験により、抵抗性判定の端緒となる現象が見られることが判明したが、遅延発光量に個々葉による数値のばらつきが比較的多いこと、このために数値の差は認められるものの統計的な有意差が判然としないケースがあることなどから、本試験の結果を持って、モモせん孔細菌病抵抗性の判定手法の確立までには至らなかった。これは、当初から想定していたことであり、今後、測定条件の性佐藤により、本試験が進呈して行くものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究については、基礎となるデータが少なく、こうしたデータを蓄積しながら、抵抗性判定の手法確立につなげることが重要である。具体的には、数値の振れを少なくするために、測定前の光条件および暗期の影響の検討、計測葉面面積、照射時間等の測定条件の検討を予定である。また、遅延発光量の品種間差異および春先から夏にかけての季節的消長についても検討を行う。 さらに、モモせん孔細菌病の噴霧接種を引き続き行い、遅延発光量を測定すると共に噴霧接種による病徴との比較を行う。これらの結果から、抵抗性判定のための葉の前処理、測定葉位、接種後の最適日数、判定に用いる照射後の時間範囲、測定に必要な枝数等の検定条件を確定して行く。本測定装置は特注品であり、平成24年度は、桃の葉用機種が測定に間に合わなかった。このため、24年度の測定には従来の機種を用いたが、フォルダーが小さく、測定の際に葉身を曲げるなどのストレスを与えるなど、いくつかの制限があった。今後、モモ用機種を用いた測定が可能になることから、より精度の高い測定が可能になると考えている。また、今後水挿しの改善による遅延発光量の減少抑制のための最適養液条件の検討を行う。 これらの条件が確定した上で、モモ既存品種および交雑実生について遅延発光量の測定による本病抵抗性の評価を進める予定である。また、可能であれば、本病菌によるスモモ黒斑病、アンズせん孔細菌病についても同様の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、直接経費として、1,000,000円を使用する計画である。内訳は、研究代表者の山口が400,000円、末貞が300,000円、馬場が300,000円である。全て物品費とし、病菌の培養及び接種、測定の際の条件設定等に用いる。また、新梢の水挿し法の改善のための、溶液の検討等の薬品・資材を購入する。
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