2013 Fiscal Year Research-status Report
アブシシン酸(ABA)シグナル伝達系を介したブドウの着色機構の解明
Project/Area Number |
24580059
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
児下 佳子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所 栽培・流通利用研究領域, 主任研究員 (70355444)
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Keywords | ブドウ / 着色 / ABA / シグナル伝達 |
Research Abstract |
平成25年度は黄緑色ブドウ「イタリア」とその着色変異体の赤色ブドウ「ルビー・オクヤマ」(ともにVitis vinifera)の果皮におけるABAシグナル伝達系等の遺伝子の発現を比較することにより、アブシシン酸(ABA)を介したブドウの着色機構の解明を行い、さらに平成24年度に行った「安芸クイーン」(V. labruscana)におけるABAシグナル伝達系遺伝子の発現解析の追試を行った。 具体的には「イタリア」と「ルビー・オクヤマ」の果皮を果粒軟化前から成熟期まで経時的にサンプリングし、既に報告されているV. viniferaのABAシグナル伝達に関与する遺伝子およびABA受容体のプライマーを用いて定量PCRによる遺伝子発現の解析を行った。その結果、一部のABAシグナル伝達系遺伝子は、「イタリア」と「ルビー・オクヤマ」では異なる発現パターンを示した。また、「イタリア」、「ルビー・オクヤマ」および「安芸クイーン」の3品種における果実成熟過程でのABA受容体の発現パターンも明らかにした。 「安芸クイーン」に対して着色開始期より低温および高温処理を行い、着色を比較したところ、H24年度同様低温処理による着色の促進が確認され、アントシアニン含量が増加した。そこで、これらのサンプルについて温度処理前後の果皮のABA含量を測定し、シグナル伝達系等の遺伝子の発現解析を行い、低温処理による着色の促進がABAを介した着色機構に及ぼす影響を明らかにした。 さらに、上記遺伝子発現解析をするためのリファレンス遺伝子としてactin、ubiquitinおよびglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)の3種類の遺伝子について検討し、果実成熟期間を通して安定して発現しているリファレンス遺伝子を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は着色変異体を用いたABAを介したブドウの着色機構解明と、ブドウ果皮における遺伝子発現解析のためのリファレンス遺伝子の検討および平成24年度の追試を計画していた。 これらの研究を推進するためには、黄緑色ブドウ「イタリア」と着色変異体の赤色ブドウ「ルビー・オクヤマ」の果皮の経時的なサンプリングと、低温処理により着色を促進した「安芸クイーン」果皮の経時的なサンプリングが不可欠であったが、果実の生育が順調であり、また低温処理により「安芸クイーン」の着色が促進したことから計画していたサンプルを得ることができた。さらに、V. vinifera果皮からのRNA抽出も順調にすすみ、遺伝子解析に必要なプライマー等は先行研究を参考にすることが可能であったため計画していた遺伝子解析を終えることができた。 その結果、成熟期間中のV. viniferaおよびV. labruscana果皮におけるABAシグナル伝達系等の遺伝子の発現パターンをほぼ明らかにすることができた。さらに、ブドウ果実において経時的に遺伝子発現解析を行ううえで、適切なリファレンス遺伝子が明らかとなった。 以上より、平成26年度に計画していた研究をほぼ終えることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
短期間の低温処理による着色の促進は、ブドウ果皮のABA含量やシグナル伝達系等の遺伝子の発現量に大きく影響を及ぼす可能性が少ないことが、平成24、25年度の結果から明らかになった。そこで当初の計画に従い、ABAおよびABA生合成阻害剤を外生的に処理するなど、着色が改変され、さらにABA濃度を人為的に大幅に変化させる処理を行うことにより、ABAがシグナル伝達系を介して着色を含んだ成熟現象に及ぼす影響を解明する。 また、平成25年度に結果が得られたV. vinifera果皮におけるABAシグナル伝達系等の遺伝子のうち、これまでに先行研究がない遺伝子に関しては、学会や論文で報告するためには追試を行う必要があると判断される。したがってこれらの追試を行い、昨年得られたデータを検証していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「イタリア」および「ルビー・オクヤマ」果皮からのRNA抽出が予想以上に順調にすすみ、またABA抽出に関しても昨年度簡素化した抽出方法により効率的に抽出することができたため、当初計上していた試薬代が不要となった。また、使用した植物のブドウの樹勢が強く、過剰な施肥により着色不良が発生する懸念があったため、施肥をほとんど行わなかった。そのため昨年度は肥料代等の発生も少なかった。 今年までに得られた成果のうち、ABAシグナル伝達系遺伝子の発現解析の結果に関しては先行研究がなく、論文としてとりまとめる前に年次反復を取ることとした。したがって今年度は英文校閲等で費用も発生していない。 前述の通り、昨年度V.vinifera果皮における遺伝子解析の結果は新規なものも含まれる。したがって、平成26年度の計画に加え、平成25年度の結果を検証するための追試を行いたいと考えており、そのための試薬代として使用する必要がある。 また、平成25年度は平成24年度に確立したABA抽出方法を適用してABAの分析を行ったが、次年度は定量の正確性を上げるために、より簡便で更に精製度を高められる精製方法を適用したいと考えている。そのためには新たなカラムによる精製が不可欠であり、それらの購入にこれらの資金を充てたいと考えている。
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