2015 Fiscal Year Annual Research Report
カンキツ変異系統を利用した自然突然変異発生の分子機構解析
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24580061
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
清水 徳朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門カンキツ研究領域, 上級研究員 (90355404)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 果樹 / ウンシュウミカン / 突然変異 / 枝変わり / ゲノム解読 / 多型検出 / SNP / INDEL |
Outline of Annual Research Achievements |
カンキツの突然変異発生機構解明を目的に、温州ミカン5系統の全配列情報から系統間多型候補を検索した。検出されたSNP候補約200万とINDEL候補約20万のうち、各系統に固有の多型候補はSNPで2-3万、INDELでは約1万で、遺伝子領域にマップされたものはその1割程度であり、そのほとんどはヘテロ型の変異であった。系統固有の遺伝子領域多型からINDELおよびSNP多型検出用のプライマーをそれぞれ74件、10件設計してウンシュウミカンにおける多型性を検証し、4 INDELマーカーと2 SNPマーカーで系統固有の多型が見いだされ、青島温州に固有の多型はその変異系統である寿太郎温州でも検出された。青島温州固有のSNPとINDEL多型はその珠心胚実生でも見いだされ、突然変異が珠心胚形成を経ても安定して維持されることが確認された。 これらの多型は主にDNAポリメラーゼの複製時エラーに起因するものと考えられ、変異は比較的高い頻度で発生していること、非遺伝子領域で発生した変異は強い淘汰を受けていないことが示唆された。NGS解析で検出された系統間多型の多くは組織内置換が進んだ変異細胞由来と考えられたが、実際に実験で多型が確認されたものは一部にとどまった。その原因として多型の存在比が1:1以外のものも設計対象としたことや、多型検出時のNGSリード数が十分ではなかったことのほかに、変異細胞が組織内で十分に固定されていない可能性が示唆された。一方で、一旦組織内で固定された変異細胞が胚形成を経ても安定して維持されていたことから、中立的な変異が遺伝的浮動により固定されるプロセスと類似した過程が体細胞突然変異においても成立していることが実験的に確認された。 以上のように突然変異検出におけるNGS解読の有効性を確認したことに加え、カンキツの突然変異発生と維持に関する重要な知見を得ることが出来た。
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