2013 Fiscal Year Research-status Report
イネにおけるRNAサイレンシング関与遺伝子とウイルス応答の解析
Project/Area Number |
24580065
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
西口 正通 愛媛大学, 農学部, 教授 (40343313)
|
Keywords | 遺伝子 サイレンシング / ジーンサイレンシング / イネ / RNA依存RNAポリメラーゼ / ウイルス / 植物病防御 |
Research Abstract |
OsRDR1変異株については、44Kのイネマイクロアレイを用いて、野生株との比較検討を行った。その結果、本変異株においてはアスパラギン酸プロテアーゼ、キシログルカンエンドトランスグルコシラーゼなどの遺伝子の発現が高度に野生型と比べて上昇し、リポキシゲナーゼやフェニルアラニンアンモニアリアーゼなどの防御遺伝子が減少していた。このことは、本変異株において、病原体に対する抵抗性が低下していることを示唆するものである。本遺伝子変異株及び前年度作成した過剰発現株において、ウイルスや細菌などに対する抵抗性の反応を解析することに着手し、検討を実施している。変異株においては、罹病性が高まり、過剰発現株においては抵抗性の増大している結果が得られている。さらに、OsSGS3とOsRDR1の交雑により得られた重複突然変異株について、PCRによる遺伝子型の判別を経て、病原体感染に対する反応についても検討を行った。一部では、OsRDR1単独変異株よりもさらに罹病性が高まるとする結果を得ている。OsRecQ1についての変異株について、紫外線照射によるDNA損傷ストレスに対してqiRNAの蓄積が見られないことが判明した。さらに、本変異株について、紫外線等を用いたストレス応答反応を解析した結果。エバンズブルー染色による細胞死判定実験により、本変異株においては野生株と比較し、細胞死が起こりやすくなっている結果があられた。さらに、OsRDR1変異株においても同様に細胞死が起こりやすくなっていることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OsRDR1変異株については、ウイルスに対する防御に対する役割について従来から言われてきたが、マイクロアレイのデータから、防御関連遺伝子についての発現量が減少していることが判明した。このことから、ウイルスに限らず他の病原体の感染に対する役割も考慮する必要があると考えられた。そのため、ウイルスのみならずイネ白葉枯病菌のような細菌についても防御反応を、ノックアウト系統であるOsRDR1変異株のみならずOsRDR1過剰発現系統についても検討した。その結果、成果で記述したように、変異株においては、感受性がより高まり、過剰発現株においては、抵抗性がの増大していることが判明した。これらの結果は、OsRDR1の関与するサイレンシング機構が、ウイルスだけでなく細菌においても影響していることを示唆するものであり、従来の概念を変化させ、さらに拡大するもので、重要な知見であると考えている。また、ジーンサイレンシング関与遺伝子であるDNAヘリカーゼ(OsRecQ1)の変異株において、DNA損傷処理に特異的な小分子RNA(siRNA)の生合成に関与していることを見出したことは、従来、菌類のアカパンカビのみで知られていた現象が、植物の分野においても同じ現象が存在することを世界で最初に明らかにしたことで、この分野について大きな進歩をもたらすものと考えている。以上のような結果とそれらの意義から、今年度の達成度はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
OsRDR1に対する病原菌感染に対する防御応答反応の解析をさらに一歩押し進める。これまで本遺伝子はウイルス防御に対する役割が言われてきたが、本研究においては、成果で記述したように、ウイルスのみならず細菌感染についても防御応答への関与が明らかになった。今後はさらに、菌類についても検討を行い、本遺伝子がウイルス以外の病原体感染に対する役割についてさらに検討を図っていく。また、ウイルスについては、小分子RNAとの関わりについて、RNA抽出ならびにその後の小分子RNA画分を調製後、siRNA等の蓄積について明らかにする。OsRDR6については、本遺伝子の破壊変異株は致死をもたらすので、それ自身の防御応答を解析できない。そこでOsSGS3がOsRDR6と結合することにより作用することが知られているので、OsSGS3変異株についての解析情報がある程OsRDR6経路における防御応答を解析することが可能であると考えている。一部、すでにOsRDR1との2重変異株の解析が進行中であり、当該遺伝子の単独変異株と重複変異株の解析結果と合わせれば、なお興味深い結果で得られるものと考えている。さらに、他のサイレンシング関与遺伝子についても小分子RNA蓄積等への関連について検討を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ウイルスの感染実験に必要な、ウイルス粒子の調製、また、ウイルス感染葉からのウイルス関連RNAの調製等のステップにおいて、予想された以上の時間を要したため、いくつかの実験が次年度にまたがらざるを得ない事情が発生した。このためにこのような次年度の使用額が生じた。 今年度の初頭に十分な実験計画を立案し、担当する学生には実験の中身について綿密な吟味を行いまた、十分な討議を実施し、注意を払いながら、一歩一歩実験のステップを確認し、効率的な予算の使用を考慮していくこととする。
|
Research Products
(12 results)