2012 Fiscal Year Research-status Report
植物のフォスファチジン酸生合成の人為的コントロールによる耐病性付与に関する研究
Project/Area Number |
24580066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
木場 章範 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (50343314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (50211800)
曵地 康史 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (70291507)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物細菌病 / リン脂質 / 植物免疫 |
Research Abstract |
植物―病原体相互作用は過敏感反応に代表される植物免疫の誘導機構に焦点が当てられ、世界中で精力的に解析が進められている。特に病原体の感染の認識に関わるレセプターの同定と認識の分子機構、細胞内情報伝達にかかわるタンパク質分子に関しては世界的に注目され、精力的に研究がすすめられている。一方、①植物の病害感受化・受容化機構に関しては未知な部分が多い。申請者は植物の免疫応答発動システムのみならず、植物の罹病化・病害感受化機構の解析を進めてきた。その過程でリン脂質、特にフォスファチジン酸(PA)含量の変化が植物免疫応答の調節に関与することを見出だした。 これまでに、①PAを脱リン酸化しジアシルグリセロールに変換するPAフォスファターゼ(PAP)遺伝子をノックダウンした植物では、PAの蓄積に伴い耐病性が向上すること。②PAPノックダウンした植物では、PAの蓄積量が増加しているが通常の植物と変わりなく成長し、免疫応答の活性化も起こっていない。しかし病原体の感染を受けると、通常の植物と比較して過剰なPAの蓄積に伴う急激・強力な免疫応答が誘導されるプライミング(病原体に対する反応性を高めるられる状態)が生じる。ことを明らかにしている。 そこで、本研究は植物細胞内でのPA蓄積量の人為的上昇による植物の耐病性を向上について検討するために、①PAP抑制形質転換タバコ植物の作出、PAP遺伝子欠損シロイヌナズナ系統の収集と種々の病原体への免疫反応の検討。②プライミング効果を誘導するために必要な感染刺激についての詳細な解析を行う。③PAP抑制植物内で蓄積しているPAの分子種を解析し、プライミング効果を持つPA分子を特定する。ことを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①PAP遺伝子抑制形質転換植物の作出:カリフラワーモザイクウイルス由来の35Sプロモーターの下流にヘアピン構造のRNAを発現するようにPAP遺伝子断片を挿入したコンストラクト(RNAiコンストラクト)を、アグロバクテリウムを介して形質転換Nicotiana tabacum(普通タバコ)に導入し、12系統の形質転換体を得た。現在、効率よくPAP遺伝子が抑制された系統の選抜を行っている。また、トマト(品種マイクロトム、マネーメーカー)の形質転換植物を作製・選抜を進めている。 ②PAP様遺伝子欠損シロイヌナズナを用いた解析:シロイヌナズナには多数のリン脂質脱リン酸化酵素遺伝子が存在する。そのうち、PAPとして機能することが明らかにされている遺伝子の欠損変異体(LPPγ、LPPε1、LPPε2、LPPε1ε2、pah1、pah2、pah1pah2)について、種子の収集が終了した。現在、青枯病細菌およびトマト斑葉病細菌を用いて、耐病性検討を行っている。 ③PAP遺伝子抑制植物におけるプライミングの分子機構の解析:PAP遺伝子抑制タバコ植物、対照植物に種々の感染刺激を与えた場合の免疫応答の変化を、活性酸素の生産、PR遺伝子の発現を指標に調べた。キチン等の細胞死を引き起こさない感染刺激を与えた場合、活性酸素の生産、PR遺伝子発現の上昇は認められなかった。一方、過敏感細胞死を誘導する非親和性細菌の感染やエリシチンタンパク質の処理では劇的な活性酸素の生産、PR遺伝子発現上昇が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の成果から、PA蓄積を介した免疫応答のプライミングに対して、強い防御を誘導するためには細胞死を伴うような強い刺激が必要である。すなわち、雑菌や日和見感染的な菌との接触では免疫が誘導されないことを示しており、病害防除の実践には極めて有効な手段を与えるものち考えられる。今後は、①プライミングに関わるPA分子の同定、②実用作物への応用の可能性、③ナス科以外の植物への展開を通して、PAを介したプライミングを利用した耐病勢植物の作出や新規の防除剤への応用を検討していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(14 results)