2012 Fiscal Year Research-status Report
キュウリモザイクウイルス感染による宿主植物の抗ウイルスPTGS抑制機序の解明
Project/Area Number |
24580069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
大木 理 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00128761)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タバコ / PTGS / VIGS / キュウリモザイクウイルス / ウイルスサプレッサー |
Research Abstract |
H24年度は,①CMV感染による導入遺伝子誘導型PTGS抑制実験系の確立(GF-IRタバコの作出),および,②CMV感染が誘導するVIGSの抑制実験の確立(CMV-GFの作出)を行った. ①に関しては当初,ハイグロマイシン耐性遺伝子を持つバイナリーベクターにGFP遺伝子のGF領域の逆位反復配列をクローニングし,カナマイシン耐性遺伝子を既に持つGFP恒常発現タバコに導入する予定であったが,この方法では二重組換え体を得ることができなかった.そこで,カナマイシン耐性遺伝子を持つバイナリーベクターにGF領域の逆位反復配列をクローニングして野性型タバコに導入し,GF-IRラインを2ライン作出した.そして,これらGF-IRラインとGFP恒常発現タバコを交配してGF-IR/GFPタバコ種子を得た. ②に関しては,当初,CMVペポRNA3の感染性クローンの外被タンパク質遺伝子の下流にGF配列を導入する予定であったが,約500塩基のGF領域を導入するとCMVの感染性が喪失した.そこで,30塩基のGFP配列をRNA3に導入し,野性型RNA1と,野性型RNA2,RNAサイレンシングサプレッサーである2bタンパク質を欠く∆2b-RNA2,あるいはサプレッサー活性を喪失させる変異を2bに導入したR46C-RNA2とともに,GFP恒常発現タバコに接種した.野性型2bを持つCMV-GFは明瞭なモザイク症状を示し,モザイク葉緑色部位においてGFP蛍光の消失が観察された.∆2bおよびR46C-2bを持つCMV-GFはタバコに病徴を示さず,ウイルスを接種した個体のほぼ全ての上位葉でGFP蛍光の消失が観察された.以上から,CMV RNA3に導入した30塩基のGFP配列で十分にVIGSを誘導できること,モザイク葉緑色部位では全体にVIGSが誘導されていることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験①,実験②ともに当初予定した方法ではPTGSおよびVIGSを誘導することができなかったが,若干の修正を加えることにより,H24年度実験の目的である,GF-IR導入遺伝子が誘導するPTGS実験系,およびCMVに導入したGFP配列が誘導するVIGS実験系の確立を達成することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
CMV感染による導入遺伝子誘導型PTGS抑制実験では,H24年度に作出したGF IR/GFPタバコ,およびGFPの過剰発現によるPTGSが誘導されたタバコ(S-PTGSタバコ)に,野性型CMV,CMV ∆2b,およびCMV R46Cを接種し,ウイルス感染タバコにおける病徴発現とGFP蛍光の有無を継時的に観察する.さらに,マクロ蛍光観察システムによりGFP蛍光消失部分,および蛍光部分からサンプリングを行い,それぞれの組織におけるGFP mRNAの蓄積量,および,GF領域(GFP遺伝子の前半約500塩基)由来siRNAとP領域(GFP遺伝子の後半約300塩基)由来siRNAの蓄積量をノーザンブロット法により解析する.野性型の2bを持つCMV感染組織においてP領域由来siRNAの蓄積が抑制されていた場合,CMVの2bは二次PTGSをしていることが証明される. CMV感染が誘導するVIGSの抑制実験では,H24年度に作出したCMV-GF,CMV ∆2b-GF,および,CMV R46C-GFをGFP恒常発現タバコに接種し,その後の病徴発現とGFP蛍光の有無を継時的に観察する.さらに,CMV感染葉におけるCMV RNA,CMV由来siRNA,GFP mRNA,GF領域由来siRNA,および,P領域由来-siRNAの蓄積量をノーザンブロット法により解析する.VIGS実験系では,30塩基のGFP配列でRNAサイレンシングを誘導しているので,GF領域およびP領域由来siRNAの蓄積が抑制されていた場合,CMVの2bは二次VIGSをしていることが証明される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の実験では,GF-IRタバコの作出,および,CMV-GFの作出に時間を要したため,これら実験材料を用いた解析まで行うことができなかった.従って,ノーザン法等に使用するための研究費を次年度に持ち越した.H25年度に行う解析では,マクロ蛍光観察システムを用いてGFP蛍光消失部分,および蛍光部分からサンプリングを行う.より正確で鮮明な画像の取得と正確なサンプリングを行うために,広視野ズームレンズ(VB-G05)の購入に研究費を使用する予定である.
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