2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580070
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大里 修一 明治大学, 農学部, 講師 (30533228)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | イネいもち病菌 / 相同組換え / 病原性変異 / I-Sce I |
Research Abstract |
イネいもち病菌の変異機構として「相同組換え」に注目し,非病原性遺伝子の変異や準有性生殖による遺伝子交換および伝達が,相同組換えによって生じるかどうかを検証する.その方法として,相同組換えを簡便に検出できるモニター系を用い,今年度はイネいもち病菌の相同組換えの諸条件を明らかにすると同時に,高頻度相同組換えの誘導を可能にするDNA二本鎖切断導入法の検討を行った. 1 イネいもち病菌における相同組換え検出系の最適条件検討 イネいもち病菌の相同組換えを簡便に検出するために,申請者がすでに確立しているYFP::BSD融合マーカーを用いた相同組換え検出系を用い,複数の菌株を作出した.本検出系が相同組換えを検知できる諸条件を明かにするために,相同組換えが誘導されるストレスの種類や生育ステージ,ゲノム中の両配列のコピー数などの検討を行い,条件の洗い出しを行った.また,相同組換えに必要な供与体配列および受容体配列の長さについて,約15 bp間隔でサイレント変異を印として挿入した相同配列を用いることで,本菌の相同組換えが切断部位近傍において生じ易いことを見出した. 2 イネいもち病菌におけるDNA二本鎖切断導入系の構築 高頻度の相同組換えを誘導するために,超低頻度切断の制限酵素I-Sce Iの認識配列(18bp)を受容体配列内に導入し,糸状菌用I-Sce Iによる二本鎖切断導入系の構築を行った.また,相同配列を持たない系統において二本鎖切断の導入により広範囲 (約4000 bp ~) の欠失が高い割合で生じるのに対して,相同配列を有する系統では欠失の割合が減少し,大幅に相同組換え修復の割合が上昇することを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネいもち病菌に相同組換え検出系を導入した複数の菌株を作出した.今年度取り組んだ本検出系による相同組換え検出の条件は,次年度の準有性生殖による組換え検出を成功させるために必須の情報であり,特に相同組換えに必要な供与体配列および受容体配列の長さに関しては,これまでの報告で見出されていなかったことであり,有益な成果である.今年度,イネいもち病菌における相同組換えの諸条件を明らかにするという課題は十分に達成できたと評価する. 非病原性遺伝子の変異に関してAvr-pita遺伝子配列を受容体配列として,対応する供与体配列を人工DNA配列として構築し,北-1株に導入した.現在,非親和性品種への接種試験を行っている.すでに,接種葉上の病斑より得られた菌の解析を進めており,概ね順調に進展している. 相同組換えを高頻度で引き起こすためには,その起点となる二本鎖切断をコントロールすることが極めて重要である.今年度,いもち病菌用のI-Sce Iによる二本鎖切断導入系を構築でき,本系を用いてイネいもち病菌ではほとんど知られていない二本鎖切断と相同組換え効率についての情報を得ることができた.さらに,任意の配列に対して二本鎖切断を導入する系としてZinc finger NucleaseやTALENといった技術も取り入れながら,次年度に向けた準備が整った.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかにしたイネいもち病菌の相同組換えが生じる諸条件に基づき,相同組換え検出系の再設計を行う.続いて当初の研究計画に従い,供与体配列のみを有する菌株と受容体配列のみを有する菌株をそれぞれ複数系統準備し,固形培地上または液体培地により混合培養することで,準有性生殖による遺伝子交換が生じることを検証する.もし,遺伝子の交換がYFP蛍光によって確認できない場合には,薬剤選抜や培養条件の検討を行う.さらに,I-Sce Iなどによる二本鎖切断導入によって,相同組換えを促進する.病原性の変異については,Avr組換え検出系を適用し,その可能性についても検証する. 最終的に,遺伝子交換が生じたことを分子生物学的に確認することによって,イネいもち病菌の遺伝的多様性が準有性生殖により引き起こされていることを証明する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画において,パルスフィールド電気泳動装置の購入を計画していたが,今年度大学の設備が拡充され,次世代シーケンサーが本学部に導入された.そこで将来性と両者の実験精度から,パルスフィールド電気泳動装置に替わる解析法として,次世代シーケンサーへの対応を検討し,それらに必要な試薬等の購入を行ったことから,研究費の使用計画を変更した.
|
Research Products
(5 results)