2012 Fiscal Year Research-status Report
プラントアクティベーターが標的とする植物因子群の同定と植物免疫制御機構の解明
Project/Area Number |
24580071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
鳴坂 義弘 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (20335459)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 植物 / マイクロアレイ / 植物免疫 / プラントアクチベーター / 低分子化合物 / シロイヌナズナ / 抵抗性誘導剤 / 病害防除 |
Research Abstract |
①植物免疫を活性化する低分子化合物を処理したシロイヌナズナにおける構造-転写プロファイル相関解析による標的遺伝子の同定 既に取得している低分子化合物A1およびその類縁体を用いて構造-転写プロファイル相関解析を実施し、標的遺伝子を探索した。シロイヌナズナの防御応答遺伝子群を活性化するA1剤はシロイヌナズナ生態型Col-0への前処理により、その後の炭疽病菌接種に対する病害防除効果を示した。A1剤の類縁化合物A2剤はA1剤と同等以上の炭疽病抑制効果示した。これに対して、類縁化合物A3剤は炭疽病抑制効果を示さなかった。このような病害防除効果(生物活性)の異なる類縁化合物をシロイヌナズナに処理して継時的にサンプリングした。次いで、それぞれのサンプルを用いてマイクロアレイ解析を実施することにより遺伝子発現プロファイルを取得した。低分子化合物処理による炭疽病抑制効果(生物活性データ)と各化合物処理した植物の遺伝子発現プロファイルとの相関解析を実施し、病害防除時特異的に発現または抑制する遺伝子群を絞り込み、これらをリスト化した。本成果によりこれら遺伝子群の特性が明らかになり、プラントアクティベーターの開発のための標準化システムの構築に資する。 ②標的遺伝子の破壊株および過剰発現株の作製 ①でリスト化した遺伝子群について、その特性を理解し、低分子化合物の処理による植物の防御応答シグナル伝達経路での作用機作を明らかにするため、ABRC(Arabidopsis Biological Resource Center)からこれら遺伝子の破壊株を取得し、自殖によりnull変異体を作製した。今後、これら変異体の特性を解析することで、植物の免疫機構が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自に取得した植物免疫を活性化する数種類の低分子化合物のうち、1種の化合物について構造-転写プロファイル相関解析を実施した。本解析により特異的に発現が変動する遺伝子群を同定でき、計画通りに研究が進捗した。しかし、これら遺伝子群がどのように植物の防御応答に関わっているのかは未知数であり、今後は当該遺伝子を破壊した植物などによりその特性を解析する必要がある。また、未解析の化合物についても同様な解析を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①植物免疫を活性化する低分子化合物を処理したシロイヌナズナにおける構造-転写プロファイル相関解析による標的遺伝子の同定: 前年度に引き続き、複数の候補化合物について本解析を実施する。 ②標的遺伝子の破壊株および過剰発現株を用いた標的因子の機能解析: 植物免疫を活性化する低分子化合物を処理したシロイヌナズナにおける構造-転写プロファイル相関解析の結果をもとに、さらに複数の化合物についてその類縁体および構造展開化合物を用いて構造-転写プロファイル相関解析を実施し、病害防除時特異的に発現または抑制する遺伝子群を取得する。24年度および25年度に取得した遺伝子群について、シロイヌナズナの遺伝子破壊株および過剰発現株をABRCから取得または独自に作製する。次いで、作製したシロイヌナズナの遺伝子破壊株および過剰発現株に炭疽病菌を接種し、病害感受度を検定する。表現型が変化した変異株の原因遺伝子は当該化合物処理により活性化する病害防御シグナル伝達ネットワークに関する因子と考えられる。さらに、プラントアクティベーター活性を有する既存剤(例:バイオンなど)の遺伝子発現プロファイルとの比較解析により、精度の高い解析を実施する。 ③植物免疫を活性化する低分子化合物に対する不感受性変異体の解析: シロイヌナズナエコタイプCol-0やWs-0の突然変異体ライブラリーを作製した。本シロイヌナズナ変異体ライブラリーに植物免疫を活性化する低分子化合物を高濃度で処理し、本低分子化合物に対する不感受性変異体を得ている。さらに、プラントアクティベーター活性を有する複数の低分子化合物で同様のスクリー ニングを実施し、不感受性変異体を取得する。次いで、本変異体の原因遺伝子をマッピングするための、F1およびF2個体を作製する。これにより、病害防御シグナル伝達ネットワークに関する因子を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
候補低分子化合物の一部の構造展開や類縁体の購入が年度末に間に合わなかったため、研究費を次年度へ持ち越した。 化合物の希釈溶液や、化合物処理した植物試料、RNAおよびcDNAサンプルが大量となり、これらを保存するための超低温フリーザーが必要となった。そのため、年度当初に超低温フリーザーを購入する予定である。また、構造-転写プロファイル相関解析に要する化合物の合成展開または類縁体の購入、マイクロアレイ解析、および、マイクロアレイデータ解析に研究費を使用する。また、研究の推進に必要な出張を予定している。
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Research Products
(2 results)