2012 Fiscal Year Research-status Report
チャハマキで発見された新たなオス殺し現象の原因因子の解明
Project/Area Number |
24580076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
国見 裕久 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50195476)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | male-killing / チャハマキ / Wolbachia / Spiroplasma / 性比異常 / ウイルス |
Research Abstract |
茶樹の重要害虫であるチャハマキの野外個体群において、オスの幼虫および蛹の選択的致死(late male-killing)により、成虫の性比がメスに偏る系統(SR系統)が存在し、その原因因子がRNAウイルス(雄殺しウイルス)であることを申請者らの研究により明らかにした。一方、2009年に静岡県で採集したチャハマキ(静岡系統)において、本ウイルスに感染していないにもかかわらず、性比がメスに偏る系統を発見した。この系統の卵のふ化率が50%以下であることから、オスの胚子が選択的に致死するearly male-killingであると考えられる。本研究では、静岡系統でのearly male-killingの原因因子を調査し、チャハマキにおけるオス殺し現象の全貌を解明することを目的としている。 静岡系統の共生微生物の感染状況を調査した結果、αProteobacteriaに属するWolbachiaとMollicutesのSpiroplasmaに混合感染していた。静岡系統の幼虫にテトラサイクリン塩酸塩を0.05%練りこんだ人工飼料を与えて飼育して、蛹を得た。羽化した成虫を交配し、次世代を得た。次世代(F1)の成虫のWolbachiaとSpiroplasmaの感染の有無を調査した結果、両細菌とも検出できなかった。さらに、第二世代(F2)の成虫の性比を調査した結果、雄雌ほぼ同数であった。このことから、静岡系統で見られるearly male-killingは、WolbachiaかSpiroplasma、あるいは両細菌の感染によって引き起こされていることが明らかとなった。さらに、静岡系統が発見された静岡県島田市の茶園のチャハマキ個体群において、雄殺しウイルスとWolbachiaかSpiroplasmaの有病率を調査した結果、有病率が4.2~8.4%と、低率であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、 1)静岡系統で感染している共生細菌の同定 2)抗生物質処理による共生細菌単独感染系統およびフリー系統の作出 であったが、これらの計画はすべて実行し、ほぼ目標を達成した。共生細菌単独感染系統の作製には至っていないが、予備実験の結果、静岡系統幼虫の磨砕液をフリー系統の幼虫に注射接種することにより、Spiroplasma単独感染系統の作出が可能であることが明らかとなっている。 さらに、25年度から開始予定であった野外での雄殺しウイルスと雄殺し細菌の有病率の変動調査を今年度から行い、データを取得することができた。有病率を3年間調査することにより、雄殺しウイルスと雄殺し細菌の世代間の変動要因を解明することが可能と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通りに研究を推進する。具体的には以下の研究課題を行う。 1)WolbachiaおよびSpiroplasma単独感染系統の作出 2)チャハマキ個体群における雄殺しウイルスおよび雄殺し細菌の有病率を第1、第2、第3、越冬世代で調査する 3)雄殺しウイルスと雄殺し細菌に重複感染した系統の作出(予備試験)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の予算執行を踏まえて、今年度は消耗品費1,000千円、国内旅費300千円を執行する。 該当なし。
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Research Products
(3 results)