2013 Fiscal Year Research-status Report
チャハマキで発見された新たなオス殺し現象の原因因子の解明
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24580076
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
国見 裕久 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50195476)
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Keywords | オス殺し / Spiroplasma / Wolbachia / 有病率 / チャハマキ / 混合感染 |
Research Abstract |
茶樹の重要害虫であるチャハマキの野外個体群において、オスの幼虫および蛹の選択的致死(late male-killing)により、成虫の性比がメスに偏る系統(SR系統)が存在し、その原因因子がRNAウイルスであることを申請者らの研究により明らかにした。一方、2009年に静岡県で採集したチャハマキ(静岡系統)において、本ウイルスに感染していないにもかかわらず、孵化率が低く、性比がメスに偏る系統(early male-killing)を発見した。本研究では、静岡系統でのearly male-killingの原因因子を調査し、チャハマキにおけるオス殺し現象の全貌を解明することを目的としている。 静岡系統は、WolbachiaとSpiroplasmaに混合感染しているので、共生細菌単独感染系統を作出するため、静岡系統の幼虫および成虫に抗生物質を2世代にわたり処理した結果、Wolbachia単独感染系統を作出した。しかし、Wolbachia単独感染系統の性比は1:1であった。次に、静岡系統の終齢幼虫の体液を採取し、昨年度作出したフリー系統の幼虫に注射接種した結果、Spiroplasma単独感染系統が得られ、ふか率がフリー系統と比べて有意に低く、性比がメスに偏っていたことから、early male-killingであることが明らかになった。 静岡県島田市の圃場にて、2012年から2013年にかけて7世代にわたってチャハマキを採集し、オス殺し因子の有病率の季節的変動を調査した。SpiroplasmaおよびRNAウイルスの平均単独有病率はそれぞれ7.1%と8.6%と低かった。有病率の季節的変動はSpiroplasmaが0.9%~15.1%、RNAウイルスが4.2%~12.9%の間を推移した。SpiroplasmaおよびRNAウイルスに混合感染していた個体の割合は0%~2.7%の間を推移した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、1)抗生物質処理による共生細菌単独感染系統およびフリー系統の作出、2)チャハマキ個体群におけるオス殺しウイルスとearly male-killing因子の有病率の変動、3)オス殺しウイルスとearly male-killing因子との相互作用 であったが、これらの計画はすべて実行し、ほぼ目標を達成した。WolbachiaおよびSpiroplasma単独感染系統の作出に成功し、Spiroplasma単独感染系統がearly male-killingであったことから、early male-killingの原因因子がSpiroplasmaであることを特定した。また、野外調査の結果、静岡島田市のチャハマキ個体群においては、低率ではあるが、early male-killingの原因因子であるSpiroplasma とlate male-killing の原因因子であるRNAウイルスに混合感染している個体が分布していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度と同様、①チャハマキ個体群におけるオス殺しウイルスとearly male-killing因子の有病率の変動を調査するとともに、②オス殺しウイルスとearly male-killing因子との相互作用を明らかにするため、Spiroplasma とRNAウイルスの混合感染系統を作出し、その生態学的特性を調査することにより、チャハマキにおけるオス殺し現象の全貌を解明する。
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Research Products
(2 results)