2012 Fiscal Year Research-status Report
原始的な花粉媒介システムにおける花香放出のタイミングと甲虫の概日リズムの関係
Project/Area Number |
24580077
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚田 森生 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (20273352)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 由隆 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (40283519)
秋野 順治 京都工芸繊維大学, 生物資源フィールド科学教育研究センター, 教授 (40414875)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 花粉媒介 / 果樹 / 甲虫 / 概日活動 / 花香 |
Research Abstract |
ハナバチの働かない有用植物について、進化の歴史をよく理解し、植物と昆虫の生物学的特性を解明することでその生産性の向上に資することを大きな目的とし、これまでバンレイシ科の果樹チェリモヤやアテモヤを具体的な材料として、甲虫による訪花や花による甲虫の誘引などを明らかにしてきた。本年は、新たな研究テーマの初年度として、花香の放出のタイミングが甲虫の生活のリズムに合わせて決まっていることを明らかにするために、甲虫の活動性を検出するための赤外線による行動の感知装置の開発と、花香の経時的な変化の分析にを行った。 赤外線による感知装置は対象となる甲虫であるクリイロデオキスイが体長3㎜程度と微小であるために、開発に苦労したが、ほぼ完成の域に達した。残された課題は電源の不安定な時に生じるノイズの除去であるが、これに関しても好適なアダプターを探し出したので、ほぼ解決できると思われる。今後、速やかに甲虫の行動を記録できる体制が整った。 花香の採取と分析に関しては、これまでに得られたデータを補強しながらも若干修正する様な結果が得られた。すなわち、エステル類が花香の主要な構成成分であることは変わらないのだが、得られた主要成分を用いたトラップでは甲虫を捕獲することができなかった。これが、トラップの構造の不備なのか、主要成分だけでは誘引力がないのか、あるいは構成比を厳密に定めなければならないのかなどを今後検討する予定である。花香放出のタイミングについても、これまでに得られたような朝の放出が無い例も観察された。なぜこのような違いが生じるのかについても今後検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたとおり、赤外線による行動記録装置の開発はほぼ終わり、次年度からのデータ収集につなげることができると考えられる。これは、交付申請書における研究目的の達成のために記した本年度の研究計画通りである。これに加えて、花香の分析からも成分や香りの量の経時的な変化に関する重要なデータが得られている。唯一、甲虫の花への出入りの情報はまだ十分に得られていないものの、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
おおむね、当初の研究計画通りに推進するが、花香の化学的な分析と調査出張を予定よりは増やす。すなわち以下のようである。 赤外線による甲虫の日周活動の記録は、今年度ほぼ完成した装置を用いて精力的に行う。装置は最大で5台程度まで数を増やし、同時並行的に記録することを目指す。連続して48時間程度の記録を何度も取る予定であるが、これは、餌の有無などで甲虫の行動や寿命が変化すると考えられるので、様子を見ながら慎重に行う。餌だけでなく、装置に投入する虫の個体数などにも変化をつけ、様々な場合の行動を記録したい。 化学分析に関しては引き続きGC/MSを活用した経時的な変化の記載を行うが、できれば雑種であるアテモヤの両親であるチェリモヤとバンレイシに関しても十分なデータを得て、におい成分の遺伝的決定基盤に関する何らかの示唆を得られれば、予定以上の成果となる。花香の経時的、定量的な変化については詳しく調べることとする。 石垣島または適当なフィールドに出張して、花への甲虫の出入りを詳しく解明する。これは24時間通しての花の定期的な観察が必要で、これまで必要と分かっていながら世界的になされていなかった部分であるのでぜひ押さえたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は本来購入予定の設備備品を、一部の部品の購入で済まし、残りは手元にある古い機器を活用した。これにより若干繰り越しが生じたが、これを上記化学分析などに活用し、必要なガラス機器、試薬等の購入に充てる。 また、旅費についても十分額を確保できるので、フィールドに十分な期間滞在して本格的な調査を行いたい。 赤外線センサーによる記録装置に関しても台数を増やすことが望ましく、この場合にはこちらにも研究費を充当したい。
|
Research Products
(1 results)