2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580079
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上野 高敏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60294906)
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Keywords | 天敵 / 指標種 / 水田 / 環境保全型農業 / 寄生蜂 / クモ類 |
Research Abstract |
本課題では、水田の生物多様性に焦点を当てながら、農法と生物多様性の評価することに適した天敵生物について焦点を当てている。環境保全型水田は生物多様性の保全を含む環境に優しい持続的生産体系というイメージを持たれてはいるが、実際に環境への効果を量的に評価した事例は少ない。そこで環境保全型農業の効果を評価することが必要となるが、そのためには効果的な農法や生物多様性の評価手段が不可欠であり、その評価手段として天敵を利用しようとしているのである。 前年度の調査で、天敵昆虫やクモ類はそのような目的として利用可能であることは既に報告した。本年度では引き続き同様の調査と分析を行うと同時に、代表的な特定種の有効性についても検討した。アオムシヒラタヒメバチとキクヅキコモリグモは西日本の水田において最も普通に観察される天敵生物である。 そこで両者の指標種としての有効性について分析した。その結果、両種が多い水田ほど他の天敵生物や全体の生物多様性が高く、水田環境を評価する指標として利用できることが明らかとなった。次に水田におけるアオムシヒラタヒメバチ成虫とキクヅキコモリグモの密度を決定する要因について分析した。ヒノヒカリ栽培水田において得た野外データを解析したところ、前者の密度は農法(殺虫剤成分カウント数と施肥量)に影響されることが明らかになったが、後者の密度は殺虫剤の使用量の増加に伴い減少するが、施肥量の影響は受けなかった。興味深いことにアオムシヒラタヒメバチで検出された影響は、見かけ上の相関によるもので、農法が寄主の鱗翅目害虫の発生量に直接影響し、その間接的な結果を受けて蜂密度が変化したものであり,施肥や農薬散布そのものの直接効果は検出されなかった。一方,水田周辺環境の影響も受け,周辺部の環境が蜂のベースとなる密度を決定することも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少なくとも一部の天敵節足動物類が指標種として利用可能であることを示すことができている。さらに、それらの発生量がどのような要因によって決まってくるかを明らかにすることで、なぜそのような種類が指標種として有効なのかについて明らかにできつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析結果が正しいことを示すため、次年度も同様の野外調査を進める。さらに指標種の候補となり得る種とそうではない種の違いがどのような生態的特性のよるのかについても明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題にある調査内容のとおり、4~5月期の野外調査が必要不可欠であるが、これらの時期において旅費として必要な額を維持しておく必要があるため。 4月と5月前半の野外調査において、旅費として使用する予定である。
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