2013 Fiscal Year Research-status Report
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24580083
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Research Institution | Okinawa National College of Technology |
Principal Investigator |
伊東 昌章 沖縄工業高等専門学校, 生物資源工学科, 教授 (00395659)
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Keywords | 無細胞タンパク質合成系 / 昆虫 / 昆虫培養細胞 / カイコ / 後部絹糸線 / 翻訳促進配列 / チロシナーゼ |
Research Abstract |
本研究は、新しい昆虫産業を創出し発展させるための基盤技術を確立することを最終目的とし、これまで我々が開発してきた昆虫無細胞タンパク質合成系を有力なタンパク質生産・解析手段の一つとするべく、その利用基盤を構築することを目的としている。 平成24年度は、研究を進める体制を構築し、カイコ無細胞タンパク質合成系において翻訳を促進する機能を有する40塩基からなるSpodoptera frugiperda 核多角体病ウイルス(SfNPV)由来ポリへドリン遺伝子の5'非翻訳領域(5'UTR)をスクリーニングによって見出した。 今年度は、(1)まず、SfNPV ポリへドリン遺伝子5'UTRの5'末端、3'末端から2塩基ずつ削除していった変異体、コザック配列の影響を無くすために3'末端の4塩基を残し5塩基上流から2塩基ずつ削除していった変異体、合計56種類の変異発現プラスミドを作製し、翻訳促進配列削除の影響を調べた。その結果、3’末端から18bp(5'-ACATTGTGAAAAAATAAA-3')の配列を用いた場合に、元の配列よりも約1.4倍のタンパク質合成量を示した。これにより、当初の目標である合成量の向上に成功した。この成果は、2014年度日本農芸化学会大会にて発表した。(2)次に、活性化にシャペロンを必要とするチロシナーゼをモデルタンパク質として用い、昆虫無細胞系における最適な共発現条件を決定した。その結果、シャペロンとチロシナーゼは1:1の関係で相互作用し、銅イオンの受け渡しを経てチロシナーゼが活性化することが示唆された。この一連の実験において、Strep-tagII配列を用いて迅速に相互作用の様子をウエスタンブロット解析することができるようになり、昆虫無細胞タンパク質合成系における共発現解析システムの構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、(1)本研究を確実に遂行するための研究体制を構築した。(2)また、次の段階として、カイコ幼虫後部絹糸腺無細胞タンパク質合成系においてSfNPVのポリへドリン遺伝子5'UTRの配列が高い翻訳促進能を有することを見出した。 平成25年度では、(1)SfNPV ポリへドリン遺伝子5'UTRをもとに合計56種類の変異発現プラスミドを作製し、翻訳促進配列削除の影響を調べた。その結果、3’末端から18bp(5'-ACATTGTGAAAAAATAAA-3')の配列を用いた場合に、元の配列よりも約1.4倍のタンパク質合成量を示した。これにより、当初の目標である合成量の向上に成功した。(2)次に、活性化にシャペロンを必要とするチロシナーゼをモデルタンパク質として用い、昆虫無細胞系における最適な共発現条件を決定した。この一連の実験において、Strep-tagII配列を用いて迅速に相互作用の様子をウエスタンブロット解析することができるようになり、昆虫無細胞タンパク質合成系における共発現解析システムの構築に成功した。なお、当初予定していた分子間相互作用解析装置を用いた相互作用の解析は、今後、ぜひ取り組み、その方法もふくめてシステム化していきたい。 以上のことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までは、おおむね順調に研究を進めることができたため、平成26年度についても、当初の予定通り研究を進める。 具体的には、まず、膜結合性タンパク質であるラッカーゼおよび1回膜貫通型膜タンパク質(HAを予定)をモデルタンパク質として、犬すい臓由来ミクロソーム膜添加による膜タンパク質発現方法の条件検討と最適化を行い、昆虫無細胞系における膜タンパク質のミクロソーム膜への挿入機構を理解していき、それらの解析方法のシステム化を試みる。なお、当初の研究計画では、昆虫培養細胞由来のミクロソーム膜を使用する予定であったがその入手が困難であるため市販品である犬すい臓由来ミクロソーム膜に変更してシステム化を試みる。また、最終年度であるため、これまでの成果を学会発表していくとともに、論文投稿していき、得られた成果を広く社会に公表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度において、論文投稿関連費用(英文添削、投稿料等)を計上していたが、論文投稿準備の段階であるためその未使用額が発生した。なお、2014年度において、その未使用額を用いて、論文投稿を行う予定である。 (1)消耗品として、カイコ抽出液を作製するために、カイコ卵30千円、カイコを飼育するための人工飼料100千円を計上している。また、本研究は、遺伝子組換え技術を用いた実験が主となる。この実験では、例えばmRNA合成キットなどの高価な試薬類や、使い捨てゲル濾過カラムなどの消耗品を大量に使っていく必要がある。そのため、試薬類、消耗品の費用として920千円計上している。(2)研究成果の公表を目的とした学会発表、研究打合わせのための出張旅費として、240千円を計上している。(3)謝金として投稿論文の英文添削費用116千円(前年度未使用分を含む).その他の費用として、オリゴプライマー合成費用代として100千円、論文投稿、掲載費用として200千円(前年度未使用分を含む)計上している。 以上のことより、2014年度の使用計画はすべて必要最小限であり金額も妥当と思われる。
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Research Products
(4 results)