2012 Fiscal Year Research-status Report
スズメバチが作るシルクの人工タンパク質生産と天然マユ構造の再構築
Project/Area Number |
24580086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
亀田 恒徳 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (70334042)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 昆虫新素材 |
Research Abstract |
スズメバチの幼虫が作るマユ(ホーネットシルク、以下ではHSと略す)について、(1) HSを構成しているタンパク質の全種を人工的に合成し、マユと同じ天然構造を有する人工HSを創り出すこと、(2) 個々の構成タンパク質の立体構造を解明すること、(3)大腸菌によるHSの生産技術によってHSを人工的に大量生産するための基礎技術を確立することを本研究の目的としている。 本年度は、HSの構成タンパク質を大腸菌によって合成し、HSの天然構造の再構築いついて検討することを研究の目的とした。 HSを構成している5種類のタンパク質(Vs1~5)のうち主要成分であるVs1~4の4種類について、Vs1-4をコードするDNAをpETベクター(Novagen製)に挿入し、それぞれの組換えベクターを得た。これらを用いてRosetta2(DE3)大腸菌(Novagen製)を形質転換し、培養の最適条件の検討を行った。 その結果、Vs1-4の収率は、大腸菌懸濁液1 Lあたりそれぞれ340(25℃培養時)、170(31℃培養時)、250(31℃培養時)、360(31℃培養時) mgであり、高い収率でタンパク質が得られることが分った。 さらに、得られたタンパク質の溶解性を検討したところ、天然のホーネットシルクと同様の挙動を示すことが分った。溶液をシャーレ上に流延して乾燥することで、柔軟性のある透明なフィルムを得ることができた。また、乾燥フィルムの固体構造の解析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であったHSの構成タンパク質Vs1~5を大腸菌によって合成し、HSの天然構造が再構築される調製条件を見つけることに対しては、Vs1~4の合成に成功した。Vs5については、天然ホーネットシルク中の存在量が他の4種と比較して少ないことと、アミノ酸の配列特性が大きく異なることから今回の検討からは除外した。 また、次年度に計画していたタンパク質の構造解析も、本年度から前倒しで開始しており、目標を上回るペースで研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大腸菌で作ったホーネットシルクタンパク質の構造解析を行うこと、及び、タンパク質の大量生産に向けた培養条件の更なる効率化を目指す。 構造解析では、NMR、X線、CDなどの分光学的手法を駆使して、大腸菌によって得られたタンパク質の構造と、天然HSとの構造比較を行う。 また、機能性についての天然HSとの比較も行う。具体的には、天然HSから得られる素材が有する細胞との特異的な接着活性が、大腸菌によって作られたタンパク質にも同様の機能を有するかといった点について検討を行う。 また、培養条件の最適化では、大腸菌培養に用いる[培地種]、[大腸菌種]、[プラスミド種]、[温度]、[時間]、[酸素量]、[振とう方法]、[振とう速度]を変数にして、最適な培養条件を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、構造解析のための分光測定に必要な消耗品、大腸菌培養に関わる試薬などの消耗品、各種の機能評価に必要な消耗品などを購入する費用に企てる。 また、Dr. Sutherland (The Commonwealth Science and Industry Research Association (CSIRO)と協力しながら研究を進めることが申請時からの計画であったので、意見交換を目的とした海外出張も予定している。当初の計画では年に1度はCSIROを訪問して、情報交換を行う予定にしていたが、24年度は両者の都合が合わず延期した。これによる予算の未使用分が次年度への繰り越し分に加わった。
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