2013 Fiscal Year Research-status Report
イネ根におけるアンモニウム態窒素過剰摂取抑制の分子機構の解明
Project/Area Number |
24580090
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 俊彦 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60261492)
|
Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 / 植物 / 生理学 / 発現制御 |
Research Abstract |
申請者は、低分子化合物を結合して酵素活性を制御するACTドメインを有するセリン(Ser)/スレオニン(Thr)/チロシン(Tyr)タンパク質キナーゼ様タンパク質1 (OsACTPK1)が、充分な外来アンモニウムイオン供給下のイネ幼植物根のアンモニウムイオン吸収の負の制御に関わる結果を得た。本研究では、OsACTPK1に着目して、イネ根のアンモニウムイオン過剰摂取抑制の分子機構を解明することを目的とする。 (1) OsACTPK1のタンパク質リン酸化機能解析と機能制御エフェクター分子の探索 Phos-tagアクリルアミドゲル電気泳動法により、大腸菌内発現組換え(r)OsACTPK1精製標品の人工被リン酸化タンパク質基質(ミエリン塩基性タンパク質MBP)に対するリン酸化活性を解析した。in vitroでは、OsACTPK1のタンパク質リン酸化活性は、アミノ酸の添加では影響されないが、アンモニウム初期同化系への炭素骨格供給に関わるTCAサイクル有機酸の添加で有意に阻害されることが判明した。 (2) スプリットユビキチン型酵母Two-hybrid解析で、OsACTPK1がイネ根のアンモニウム輸送に関わる原形質膜タンパク質と相互作用することが示唆された。 (3) イネ根において、OsACTPK1転写産物の発現は、充足濃度アンモニウムイオン供給に特異的に応答し、硝酸イオン供給などでの応答は低いことが判明した。 (4) OsACTPK1遺伝子自己プロモーター-OsACTPK1 cDNA-sGFPキメラ遺伝子導入イネ日本晴の幼植物の根では、sGFP融合タンパク質は、主に伸長帯のアンモニウムイオン曝露される表層細胞群(表皮・外皮)のサイトゾルに蓄積することが判明した。また、同キメラ遺伝子をOsACTPK1遺伝子破壊イネに導入後、F1後代を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
in vitroでOsACTPK1のタンパク質リン酸化活性を制御しえるエフェクター分子を選抜した点や、酵母Two-hybrid解析で、OsACTPK1がイネ根のアンモニウム輸送に関わる原形質膜タンパク質と相互作用することを示せた点は、評価できると考える。しかし、イネ植物体細胞内での上記のエフェクター分子による活性制御や上記の原形質膜タンパク質との相互作用は証明していない。また、当該原形質膜タンパク質のOsACTPK1による被リン酸化も解析中である。一方、充足濃度のアンモニウムを供与したイネの根のOsACTPK1発現蓄積細胞群が、アンモニウム吸収・初期同化における鍵タンパク質・酵素の発現蓄積細胞群とほぼ一致することを示せた点は、OsACTPK1のアンモニウム吸収・同化における機能的重要性を支持する。OsACTPK1遺伝子破壊イネの機能相補試験は、現在遂行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
OsACTPK1のタンパク質リン酸化活性を制御するエフェクター分子候補やOsACTPK1と相互作用する原形質膜タンパク質候補は選抜した。イネ細胞内におけるOsACTPK1と当該原形質膜タンパク質の相互作用を確認し、エフェクター分子存在下でのOsACTPK1による当該膜タンパク質の被リン酸化とアンモニウム輸送機能の変化を詳細に解析する研究を現在遂行している。また、OsACTPK1遺伝子破壊イネの機能相補試験も現在進めている。よって、平成25年度の継続研究計画と、平成26年度研究計画の同時期遂行に問題は無いと考えられる。最終的に平成24・25・26年度の結果を統合的に整理・解釈して、イネ根におけるOsACTPK1によるタンパク質リン酸化修飾を介したアンモニウムイオン過剰摂取抑制機構の分子モデルを提案することを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度継続研究計画と当該平成25年度研究計画である、rOsACTPK1精製標品を用いたin vitroでのタンパク質リン酸化活性制御機構解析、OsACTPK1と OsAMT群との機能的関連性の解析、OsACTPK1がmRNA発現レベルで制御しえるアンモニウム輸送因子候補の探索、OsACTPK1の標的リン酸化タンパク質の同定、及びOsACTPK1遺伝子破壊イネの機能相補試験に関しては、完遂できなかった。 平成24・25年度からの継続研究計画である、rOsACTPK1精製標品を用いたin vitroでのタンパク質リン酸化活性制御機構解析、OsACTPK1と OsAMT群との機能的関連性の解析、OsACTPK1がmRNA発現レベルで制御しえるアンモニウム輸送因子候補の探索、OsACTPK1の標的リン酸化タンパク質の同定、及びOsACTPK1遺伝子破壊イネの機能相補試験に関しての研究費は、平成25年度から平成26年度に持ち越した。また、平成26年度の研究計画遂行にかかる研究費は申請額と同額である。従って、研究遂行に問題は無いと考える。
|
Research Products
(7 results)