2013 Fiscal Year Research-status Report
微生物を介した土壌の炭素代謝に対する無機物質の影響
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24580095
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
西山 雅也 長崎大学, 大学院水産・環境科学総合研究科, 教授 (50263801)
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Keywords | 土壌学 / 微生物 / 生物地球化学 / 炭素循環 / 二酸化炭素排出削減 |
Research Abstract |
本研究は、鉄、アルミニウム、マンガンなどを含む無機物質が、土壌微生物を介した有機物代謝に与える影響を明らかにすることを目的としている。本年は、1:無機物質付着処理を施した遺体有機物の無機化速度に関する検討、ならびに、2:土壌分離株への無機物質付着処理方法、について検討した。 1:遺体有機物の無機化速度に及ぼす無機物質処理の影響:久保田ら(1986)の方法に準じて、各種アルミニウムによる処理を施した植物遺体を調製し、土壌に混合した。畑状態水分条件で土壌を培養した際の二酸化炭素発生量を測定したところ、アルミニウム処理により二酸化炭素発生量の低下が認められる場合があった。また、処理の過程で植物遺体を乾燥させることによって二酸化炭素の発生がさらに抑制される結果が得られた。以上の結果は、易分解性成分を含む生物遺体有機物にある種の形態あるいはある強度でアルミニウムが付着した場合、土壌中での有機物滞留時間が増すことを示唆するものと思われる。 2:無機物質付着処理方法の検討:微酸性から中性の条件下で溶存態 Fe (II) を含む溶液を調製する方法を検討した。その結果、脱酸素処理を施した緩衝溶液に第一鉄塩を溶解させ、Fe (II) により残存溶存酸素を除去する方法が簡便であった。現在、この方法で調製した含 Fe (II) 液による微生物細胞の付着処理を試験している。 3:日本土壌肥料学会名古屋大会(9月)ならびに日本腐植物質学会講演会(11月)に参加し、関連専門分野の情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的:非晶質無機物質が土壌微生物を介した有機物代謝に与える影響について解明する」に対して、現状では、影響が観察される事例が見出された状況である。今後、さらに影響観察の事例を増やすとともに、その条件の詳細、影響が生じる機構などに関する解明が必要である。25年度実施計画に掲げた項目のうち、生細胞の活性に及ぼす影響については、今後、実験結果を蓄積する必要があることから、十分な進展状況とは言いがたい。また、同項目のうち、生細胞の生残性に及ぼす影響、微生物遺体の被分解性に及ぼす影響については、次年度より着手の予定である。以上の進捗状況から、上記の自己点検評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1:鉄、アルミニウムとともに、土壌中での溶解、析出、微生物との相互作用の程度が著しいと考えられるマンガンも含め、共存・付着処理が微生物活性に与える影響を調べる。この際、供試微生物の菌株数を増やし、普遍的に、無機物質が及ぼす影響を見出せるよう実験計画立案の際、留意する。 2:上の三元素を中心に、処理微生物の生残性を検討する。 3:上の三元素を中心に、微生物遺体の被分解性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用予定の研究費が生じた理由は、各項目の予算・決算額に以下に示す多少のずれが生じた結果、残額が生じたためである。物品費:予算40万円に対し、支出411,257円。旅費:予算8万円に対し、支出78,290円。その他:予算4万円に対し、支出7,710円 生じた次年度使用額は、翌年度請求分と合わせて使用する。翌年度請求額の使用計画として、物品費では、消耗品として、無機物質の定量、微生物の培養、生化学試験、代謝活性試験に使用する試薬類、ならびに、土壌および微生物の培養、分析に用いるガラス器具、プラスチック器具、ピペット器具などの器具類を予定している。また、研究成果発表の学会参加のための旅費、投稿のための「その他」を予定している。
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