2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24580097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
森 昭憲 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所草地管理研究領域, 主任研究員 (60355089)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脱窒酵素活性 / 草地土壌 / 堆肥 |
Research Abstract |
本研究課題は、堆肥連用が草地土壌の脱窒酵素活性(DEA)に及ぼす影響を解明し、堆肥散布と適切な減肥の組み合わせで、草地からの一酸化二窒素(N2O)の発生が、化学肥料連用の場合より少なくなるメカニズムを明らかにすることを目的とする。 DEA測定には、畜産草地研究所・那須研究拠点内の表層に火山灰を含む永年草地に4反復で精密管理された堆肥区と化学肥料区から採取した表層土壌を供試した。2004年から、堆肥区には木質系副資材を含む乳牛堆肥が30 Mg ha-1 year-1表面散布され、連用年数に応じた減肥が行われ、化学肥料区には190~210 kg N ha-1 year-1の硫安が表面散布されている。両処理区の表層土壌を深度別に0-5、5-10、10-15cmから採取後、アセチレン阻害法でDEAを測定した。また、アセチレンガスの添加条件を変え、脱窒過程におけるN2O/N2O+N2の生成比率を推定した。 DEAは、地表面ほど高く、堆肥区が化学肥料区より高かった。土壌のpH値は、堆肥区では地表面ほど高く、化学肥料区では地表面ほど低かった。また、脱窒過程のN2O/N2O+N2の生成比率は、堆肥区が化学肥料区より小さい傾向が継続的に認められた。 また、草地の表層土壌のDEAの季節変化が示された。特に、高温多雨の梅雨明け時期に、堆肥区では化学肥料区よりDEAが著しく高まった。しかし、低温少雨の冬季においても、堆肥区では化学肥料区よりDEAが高い傾向が維持された。 以上のことから、草地における堆肥の表面散布は表層土壌のDEAを高めるが、同時に土壌酸性を改善し、N2O/N2O+N2の生成比率を抑制することで、脱窒由来のN2O発生を少なくする可能性が見出された。今年度の研究成果は、堆肥連用と適切な減肥の組み合わせによるN2O発生抑制のメカニズム解明に向けた次年度研究の端緒となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
草地土壌の深度別の脱窒酵素活性(DEA)は、堆肥および硫安の表面散布の影響を受けていることを裏付ける基礎データが得られ、有機物供給と土壌pH値の両者がDEAに影響を及ぼすことが示唆された。また、堆肥区と化学肥料区におけるDEAの季節変化のデータが蓄積され、梅雨明け時期にDEAの処理間差、DEAの絶対値が大きくなることが示唆されている。さらに、アセチレンガスの添加条件を変えた培養実験で推定されたN2O/N2O+N2の生成比率は、堆肥区が化学肥料区より小さい傾向が認められた。堆肥連用は化学肥料連用との比較において、有機物供給と土壌酸性改善により表層土壌の脱窒酵素活性を高めるが、その一方で、表層土壌のpH値を高く維持することで、脱窒過程におけるN2O/N2O+N2の生成比率を低下させ、結果的に永年草地からのN2O発生量を顕著に増加させない可能性が見出された。これらのデータ解釈は、年次間差を考慮し、次年度以降の検証が必要であるが、現在のところ、計画段階における作業仮説を概ね支持する実験結果が得られていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
堆肥連用が永年草地の表層土壌の脱窒酵素活性(DEA)の季節変化に及ぼす影響について、今年度のデータ解釈を検証するため、堆肥区、化学肥料区におけるDEA測定を継続する。また、堆肥区、化学肥料区におけるN2O/N2O+N2の生成比率の季節変化を解明することを試みる。これらの実験結果を総合的に解析し、DEAやN2O/N2O+N2生成比率の処理間差、季節変化、年次間差が生じる原因の解明と情報の整理を試みる。さらに、DEA測定時に、硝酸カリウムやグルコースの添加条件、溶液のpH条件、アセチレンガスの添加条件を変化させることで、DEA、N2O/N2O+N2の生成比率に処理間差が生じる原因の解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
供試土壌の前処理と化学分析、脱窒酵素活性(DEA)の測定を補助する契約職員の賃金として使用する。さらに、DEA測定に必要不可欠である高純度アセチレンガス、高純度窒素ガス、一酸化二窒素の標準ガス、ガスクロマトグラフおよび真空ポンプの消耗部品の購入のために使用する予定である。また、平成24年度の研究期間中に、DEA測定に使用中のガスクロマトグラフのエレクトロン・キャプチャ検出器用の温度センサの劣化が判明したため、当該センサの交換修理に一部の研究費を充てる。また、研究成果を広く公表するため、学会出席旅費、学会発表登録料、英文校閲料、論文投稿料として研究費を支出する予定である。なお、平成25年3月に上記のガスクロマトグラフ修理を実施する予定であったが、見積額に対し残額が不足したため、68,800円を平成25年度に繰り越す必要が生じた。このため、繰越金はガスクロマトグラフの修理費用の一部に使用する。
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