2015 Fiscal Year Annual Research Report
FNRとフェレドキシンアイソフォームによる窒素代謝と炭酸固定への電子伝達分配機構
Project/Area Number |
24580098
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
樋口 美栄子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40443014)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光合成 / 窒素固定 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成産物に由来する炭素代謝と窒素代謝には、相互にバランスを保つ仕組みがあることが知られているが、どのようなメカニズムが働いているかは不明である。これまでに光合成電子伝達の構成因子であるFNRの2つのアイソフォームの量比に伴い、フェレドキシン(Fd)のアイソフォームの量比が変化し、窒素代謝と炭酸固定への電子分配が変化することを明らかにしている。本研究では、FNRとFdのアイソフォームの発現パターンについて解析した。イネのFNR1とFNR2は葉身・葉鞘で発現が高く、穂が発達するにつれ発現量は増加し、開花後は減少していった。発現量の生育培地の窒素濃度依存性は見られなかった。シロイヌナズナにおいても、イネと同様の発現パターンを示した。Fdのアイソフォームについては、発現量はそれぞれ異なるが、同様の発現パターンを示した。炭酸固定活性がより誘導される高二酸化炭素濃度で生育させたシロイヌナズナでの経時的な発現変化を観察した結果、FNR1・FNR2・Fd1・Fd2の発現量が若干低下しており、Fd3・Fd4の発現量は若干増加していた。このことから、少なくとも高二酸化炭素ではFdのアイソフォームの量比により炭酸固定への電子分配を制御している可能性が示唆された。またFNRの過剰発現体において、Fdの電子分配に関与する遺伝子の発現変化について解析した。窒素代謝に関与する硝酸レダクターゼとグルタミン合成酵素はFNR1のOXでは変化がなく、FNR2のOXでは約3倍に増加していた。亜硝酸レダクターゼは両者で若干減少していた。Fd:チオレドキシン酸化還元酵素は野生型とほぼ変わらなかった。FNR2のOXは窒素代謝への電子分配が優先的に行われているため、硝酸レダクターゼやグルタミン合成酵素の発現が増加していると考えられ、FNR1のOXでは光合成活性に阻害がないため大きな発現変化が見られなかったと考えられる。
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