2013 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリアのバイオフィルム形成と新規塩耐性獲得メカニズムの解明
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24580100
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
七谷 圭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00547333)
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Keywords | シアノバクテリア / 塩ストレス / バイオフィルム形成 / 二成分性シグナル伝達 / c-di-GMP |
Research Abstract |
酸素発生型光合成を行う細菌であるシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803は、比較的環境変化の大きい環境に適応して生育することができる。本研究では生化学的手法、遺伝学的手法、ゲノム工学的手法を組み合わせ、多角的アプローチによりシアノバクテリアのバイオフィルム生合成の分子メカニズムと塩耐性獲得機構を解明することを目的とした。 微生物が様々な外部環境変化を鋭敏に感知して細胞が適切に応答するシステムとして二成分情報伝達系が知られている。二成分情報伝達系は、細胞膜にあるHistidine kinase (Hik)と、そこで受容したシグナルをリン酸化/脱リン酸化リレーによって遺伝子発現を誘導するResponse regulator (Rre)の二成分で構成される。ラン藻のバイオフィルム形成も高塩濃度という環境ストレスにより誘導されることから、二成分情報伝達系の関与が推定された。そこで、二成分情報伝達系遺伝子破壊株ライブラリーを用いて、各破壊株の高塩濃度条件下でのバイオフィルム形成を調べることにより、バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の探索、バイオフィルム生合成遺伝子の発現を制御するレスポンスレギュレーター(Rre)の探索を行った。この結果、バイオフィルム形成への関与が推定されるHikおよびRreを複数同定した。さらに、これらの二成分性シグナル伝達因子に、セカンドメッテンジャーであるc-di-GMPの合成、分解に関与するドメインが存在することを見出した。さらに、これらのHik, Rreを大腸菌を用いて発現・精製し機能を解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の概要で述べたとおり、これまでの研究により塩ストレスによるバイオフィルム形成誘導を担うHikおよびRreを同定した。さらに、Synechocystis sp. PCC6803のバイオフィルム形成誘導には、セカンドメッセンジャーc-di-GMPが関与することを明らかにした。今後はこれらの成果を手掛かりにして、バイオフィルム生合成酵素の探索を進め、Synechocystis sp. PCC6803のバイオフィルム形成誘導メカニズムの全容の解明を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
・これまでの研究からSynechocystis sp. PCC6803は、二成分性シグナル伝達因子によるシグナル伝達を介してバイオフィルムの形成を誘導することが明らかとなり、さらにそこにはセカンドメッセンジャーであるc-di-GMPが関与することが明らかとなった。そこで、これらのシグナル伝達の全容を明らかにするため、二成分性シグナル伝達因子を精製し、酵素学的・熱力学的なアプローチによりシグナル伝達メカニズムの解明を目指す。 ・ラン藻Synechocystis sp. PCC6803の全ゲノム配列は公開されており、各種変異株や網羅的解析の結果もcyanobaseなどのwebsiteで情報が公開されている。本研究では、生化学的なアプローチに加えてゲノム情報を有効に活用した遺伝学的なアプローチによりバイオフィルム生合成に関与する遺伝子の同定を目指す。Synechocystis sp. PCC6803のバイオフィルム形成に関連する遺伝子は全く調べられていない。そこで、本研究ではこれまでの研究からバイオフィルム形成に関与することが明らかとなった、二成分性シグナル伝達因子破壊株を用いて、これらの破壊株における遺伝子発現を次世代ゲノムシーケンサーを用いて解析し、バイオフィルム形成に関連する遺伝子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではこれまでの研究からラン藻のバイオフィルム形成に二成分性シグナル伝達が関与することを明らかにした。そこで、平成25年度にこれらのシグナル伝達因子破壊株を用いて、これらの破壊株における遺伝子発現を次世代ゲノムシーケンサーを用いて解析しバイオフィルム形成に関連する遺伝子を同定する予定であった。しかし、バイオフィルム形成に関与するシグナル伝達因子の個数が予想以上に多く、解析に予想以上の時間を要した。平成26年度は、引き続きシグナル伝達因子破壊株の解析を進め、次世代シークエンスを用いて、バイオフィルム形成に関与する因子の同定を目指す予定である。 平成26年度は、ラン藻のバイオフィルム形成に関与するシグナル伝達因子の機能解析や次世代シークエンスを用いた遺伝子発現解析を進めるため、下記のように使用する計画である。 【消耗品】バイオフィルム生合成関連遺伝子の遺伝子破壊用プラスミドDNAの作製のため合成オリゴDNA、遺伝子工学実験用試薬, 特級寒天,プラスミド抽出キット、ラン藻の遺伝子破壊株の培養用試薬、電子顕微鏡観察用試薬、バイオフィルム検出用試薬、プラスチック器具(200 ulチップ, 1000 ulチップ, 1.5 ml サンプルチューブ, 15 ml 遠沈管, 50 ml 遠沈管, 96ウェルマイクロタイタプレート, PCR 8連チューブ)、ガラス器具 【旅費・その他】研究成果を積極的に発表するため、国内学会(日本農芸化学会、日本生物工学会)、および国際学会(Gordon Research conference, 米国)への参加旅費
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Research Products
(6 results)