2014 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリアのバイオフィルム形成と新規塩耐性獲得メカニズムの解明
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24580100
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
七谷 圭 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00547333)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 塩ストレス / バイオフィルム形成 / 二成分性シグナル伝達 / c-di-GMP |
Outline of Annual Research Achievements |
シアノバクテリアは変化に富んだ環境中で生育しているため、様々な環境適応機構を有する。申請者は、これまでにシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803が、塩ストレス条件下で基板上にバイオフィルムを形成することを見出した。そこで、本研究では塩ストレスがどのように細胞内部に伝えられ、細胞外でのバイオフィルム形成を誘導しているのかを明らかにするための研究を行った。はじめに、バイオフィルム形成を誘導する二成分制御系の探索を目的として、Synechocystis sp. PCC6803の有する44のHik遺伝子を一つづつ破壊した遺伝子破壊株ライブラリを用いて、クリスタルバイオレット染色法によりバイオフィルム形成試験をおこなった。その結果、バイオフィルム形成を誘導するヒスチジンキナーゼを複数同定した。さらに、バクテリアルtwo hybrid法(BATCH)を用いてバイオフィルム生合成に関与するHikと相互作用するRreのペアの探索を行い、リン酸基のリレーを行っていると推定されるHik-Rreのペアを複数同定した。これらのペアの中には、HikもしくはRreがセカンドメッセンジャc-di-GMPの生合成に関わるドメイン(GGDEFドメイン)を持つものも含まれていた。そこで、これらのHikもしくはRreを大腸菌を宿主として発現させ、アフィニティーレジンを用いて精製し、これらの蛋白質がc-di-GMP合成能を有するかどうかを生化学的に検討した。その結果、これらの蛋白質はGTPを基質としたc-di-GMP合成活性を有し、GGDEFドメインに変異を導入した変異体蛋白質ではc-di-GMP合成活性は観察されなかった。この結果から、Synechocystis sp. PCC6803の塩ストレスによるバイオフィルム形成にはc-di-GMPを介したシグナル伝達が関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Synechocystis sp. PCC6803の有する44のHik破壊株ライブラリを用いてクリスタルバイオレット染色法によりバイオフィルム形成試験を行った結果、予想していた以上に多くのHikがSynechocystis sp. PCC6803のバイオフィルム形成誘導に関与していることが明らかとなった。このことは、シアノバクテリアが多様な塩ストレス適応メカニズムを有していることを示しているが、当初予定していた以上のHikについて、生化学的、遺伝学的な解析を進める必要が出てきた。そのため、研究の進展に遅延が生じた。また、2014年4月に破壊株などの菌株をストックしていた-80℃フリーザーが故障したことにより、バイオフィルム形成の解析に必要な遺伝子破壊株ストックの一部が失われ、再度破壊株の作成を行うことが必要となり研究の進展がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の成果から、Synechocystis sp. PCC6803の塩ストレスによるバイオフィルム形成には、当初予想していた以上に様々なシグナル伝達カスケードが関与していることが明らかとなって来た。これらの中で特に重要と思われるのは、(1)セカンドメッセンジャーc-di-GMPを介したシグナル伝達、(2)塩ストレス応答への関与がすでに報告されている二成分情報伝達系シグナル伝達(バイオフィルム形成との関連は明らかにされていない)、(3)走化性シグナル伝達に類似したシグナル伝達、の3つのシグナル伝達メカニズムである。(1)に関しては、すでに大腸菌を用いた蛋白質の発現、精製、LC/MSやHPLCを用いた酵素学的解析を進めており、今後はHikからRreへのリン酸基転移リレーの解析やそれによるc-di-GMP合成活性制御メカニズムに関して、さらに詳細な解析を進める予定である。また、(2)に関しては、これまでに解析されている対象となるHik破壊株の塩ストレス条件下と通常条件下での遺伝子発現を丁寧に比較解析することにより、バイオフィルム形成に関与する多糖合成酵素などを同定できる可能性がある。加えて、次世代シークエンスなどによる遺伝子発現解析も必要に応じて行う予定である。(3)について、バクテリアルtwo hybrid法(BATCH)による各因子の相互作用解析、バイオフィルム形成解析を進める予定である。これらの実験により、Synechocystis sp. PCC6803における塩ストレス誘導性バイオフィルム形成のメカニズムの複数のシグナル伝達カスケードの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
シアノバクテリアの塩ストレスによって誘導されるバイオフィルム形成メカニズムを解析する過程で、当初予想していた以上に多くの因子がバイオフィルム形成に関与していることが明らかとなり、解析に時間を要している状況である。また、2014年4月にそれまで破壊株をストックしていた-80℃のフリーザーが故障し、ストックの一部が溶解、死滅してしまった。計画通りに解析を進めるためには、再度、破壊株を作製する必要があるが、シアノバクテリアは複数のゲノムを有することから完全な破壊株の取得には3~6か月の時間を要するため、研究に遅延が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により研究が遅延しているため、平成27年度は二成分制御系によるバイオフィルム生合成酵素誘導メカニズムの解析、Hikと相互作用するRreの同定と、Rre破壊株のバイオフィルム形成試験を行う。そこで、これらの実験に必要な遺伝子破壊株作製関連試薬(オリゴDNA, ポリメラーゼ,大腸菌・シアノバクテリア形質転換用試薬)、バイオフィルム形成試験用試薬(クリスタルバイオレット・エタノール)、培養用器具(三角フラスコ)と試薬、プラスチック器具(バイオフィルム形成試験用96穴プレート、1.5 mlチューブ、15 mlチューブ、50 ml チューブなど)、ガラス器具(ビーカーなど)の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)