2013 Fiscal Year Research-status Report
代謝および転写機構改変によるメタノールを原料にした高物性PHA生産菌の育種
Project/Area Number |
24580103
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
折田 和泉 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (70525964)
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Keywords | メタノール / 微生物代謝改変 / ポリヒドロキシアルカン酸 |
Research Abstract |
本研究はメタノールを単一炭素源として生育できるメタノール資化性細菌に対して、(1)従来の遺伝子工学的手法を用いた代謝改変と(2)転写制御因子であるσ70にランダム変異を加える包括的な転写機構の改変を実施することで次世代資源であるメタノールを原料にして高物性を有する共重合ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を効率的に生産するための微生物育種を目的としている。 (1)モデルメタノール資化性細菌であるMethylobacterium extorquensはメタノールを原料として炭素数4のモノマーのみからなるホモポリマーを蓄積する。共重合PHAを合成するために、第二モノマーとして着目したC6モノマーの前駆体であるブチリル-CoAを生成する酵素遺伝子の高発現を試みたが、いずれの株についてもC6モノマーの増加は認められなかった。 (2)PHA生産能が向上した株の取得を目指し、σ70をコードするrpoDのランダム変異導入ライブラリーをエラープローンPCRおよび megaprimer PCR of whole plasmid (MEGA-WHOP)法により作製した。rpoDランダム変異ライブラリーでM. extorquensを形質転換し、PHA染色色素を含む固体培地を用いてスクリーニングを行った結果、コントロール株と比較してPHA蓄積率が150%程度向上した株を複数取得した。このような包括的転写バランスの改変をPHA生産菌やメタノール資化性菌の育種に利用した例はこれまでなく、本実験はその有用性を示すことでこれらの新しい育種法を提案したといえる。また今後、得られた変異株の詳細な解析により、遺伝子配列から予想し得ないPHA生産やメタノール代謝に関する有用な知見が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではメタノール資化性菌の代謝改変手法として、1)遺伝子工学的手法を用いた代謝改変、2)転写制御因子であるσ70のランダム変異を加える包括的な転写機構改変の2つの方法をとっている。 1) 遺伝子組換えによる株の取得は順調に進んだが、取得した株の培養の結果は予想と違い、コントロール株と差が見られなかった。今後、ターゲット遺伝子の変更が必要であると考えられる。 2) 平成24年度までにライブラリー構築のための条件検討が大旨終了していた。平成25年度には表現型を指標にした変異株のスクリーニング条件を決定し、目的の表現型をもつ変異株の取得に成功した。進行状況は申請書の内容とほぼ一致しており、予定通り研究が進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子工学的手法による代謝改変では、新しいターゲット遺伝子の高発現を試みることでメタノールから共重合PHAを生合成する代謝経路の強化をはかる。また、これまでに構築した遺伝子破壊株のいくつかはメタノール生育能を欠失している。代謝バランスを変化させることでメタノール生育能が回復する可能性があることから、これら遺伝子破壊株を宿主にしたσ70のランダム変異を試みる。 包括的な転写機構改変では、これまでに取得した変異株を新たな宿主として2nd・3rdラウンドスクリーニングを実施することで、より優れた変異株の取得を目指す。望ましい変異体が取得された後は、トランスクリプトーム解析に供することで発現量が変化した遺伝子を同定するとともに、遺伝子工学的手法を用いた代謝改変に同定結果をフィードバックさせるなどさらなる育種につなげる。
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Research Products
(3 results)