2013 Fiscal Year Research-status Report
キノコ菌糸の光応答遺伝子の全解析と一次代謝産物との相関性の評価
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24580106
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小嶋 政信 信州大学, 農学部, 教授 (20153538)
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Keywords | キノコ菌糸 / 代謝経路の光制御 / メタボローム解析 / シキミ酸経路 / 光質効果 / 光強度効果 / 遺伝子発現解析 / 機序解明 |
Research Abstract |
(1)シキミ酸代謝経路に及ぼす光質効果と光強度効果の解析:① 前年度に確立した実験方法により、光強度と照射時間、及び温度を一定にして、単色可視光LED(青色、緑色、赤色、赤色光)を照射したヒラタケ菌糸からシキミ酸を抽出し定量した。② 青色光刺激を与えた場合のシキミ酸蓄積量と比較して,シキミ酸代謝経路に及ぼす単色可視光の光質(光波長)効果を解析した。③ 上記①と②の実験結果から、ヒラタケ菌糸体内にシキミ酸を蓄積させる効果を有する単色可視光は、青色光のみであることが判明した。④ 照射時間と温度を一定にして、ヒラタケ菌糸体内のシキミ酸蓄積量に及ぼす青色光強度の影響を解析したところ、シキミ酸蓄積には最適な光強度が存在することがわかった。 (2)青色光刺激によるシキミ酸蓄積能を有する最適キノコ菌糸の探索 ヒラタケは、ヒタタケ科ヒラタケ属の食用キノコである。同科同属のキノコ、及び他科他属の各キノコ菌糸を暗所培養した後、上記①と同条件下で青色光を照射した。各キノコ菌糸からシキミ酸を抽出して定量したところ、シキミ酸蓄積能はキノコ菌糸の科・属に依存することがわかった。 (3)ヒラタケ菌糸の一次代謝産物に及ぼす光質効果の解析:青色光刺激によるヒラタケ菌糸の一次代謝産物変化と比較するため、緑色光刺激による一次代謝産物変化を網羅的に解析した。緑色光刺激を与えた場合の一次代謝産物変化は、青色光刺激による変化とは異なることがわかったが、シキミ酸のような顕著な有用代謝産物の増加は確認できなかった。しかし、青色光と緑色光では、明らかに代謝経路に及ぼす影響が異なるため、子実体原基形成段階・子実体生長並びに形態形成段階における影響を追跡する必要があると考えられる。 (4)シキミ酸蓄積を制御する遺伝子の発現解析:シキミ酸生合成に関わる律速反応酵素をコードする遺伝子の発現量と青色光照射時間に良い相関性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ヒラタケ菌糸体内に、シキミ酸を蓄積させる最適な光質と光強度に関する知見が得られた。 2.青色光と緑色光がヒラタケ菌糸の一次代謝産物に及ぼす影響の違いが確認できた。 3.青色光刺激によるシキミ酸蓄積量の増加は、リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析実験から、シキミ酸生合成に関与する各代謝経路の律速反応酵素の発現量に依存する可能性が高いことを示す有力な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.シキミ酸生合成を制御する各代謝経路の律速反応酵素の発現解析 平成25年度に実施した遺伝子発現解析結果と相関して、シキミ酸生合成を制御する各代謝経路の律速反応酵素の発現が実際に増加しているか確認する。 2.研究を総括して成果報告書を作成するとともに、学会発表や学術論文として公表する。
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