2012 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母を用いた多価不飽和脂肪酸の生理機能解析とストレス耐性化への応用
Project/Area Number |
24580109
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 晃一 京都大学, 微生物科学寄附研究部門, 准教授 (90282615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 純 京都大学, 微生物科学寄附研究部門, 教授 (00343822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微生物 / 出芽酵母 / 不飽和脂肪酸 / ストレス耐性 |
Research Abstract |
野生型の出芽酵母は一価の不飽和脂肪酸(パルミトレイン酸、オレイン酸)しか生合成できない。このような酵母に他生物種由来の多価不飽和脂肪酸合成遺伝子を導入すれば、人為的に様々な多価不飽和脂肪酸を合成させることが可能である。我々は様々な多価不飽和脂肪酸を有する酵母のストレス耐性を評価することで、多価不飽和脂肪酸種とストレス耐性の関係性について明らかに出来るのではないかと考えて研究を進めている。平成24年度は、出芽酵母における多価不飽和脂肪酸合成系の確立に向けた基礎基盤を整備するため、オレイン酸(一価不飽和脂肪酸)→リノール酸(二価不飽和脂肪酸)→α-リノレン酸(三価不飽和脂肪酸)の合成経路に注目して研究を進めた。オレイン酸→リノール酸の変換はΔ12不飽和化酵素、リノール酸→α-リノレン酸の変換はω3不飽和化酵素により触媒される。出芽酵母に油脂生産性糸状菌Mortierella alpina由来のΔ12不飽和化酵素を発現させたところ、野生型株には検出されないリノール酸の蓄積が確認された。更に、Δ12不飽和化酵素とω3不飽和化酵素を共発現させると、予想通りα-リノレン酸が検出されるようになった。興味深いことに、ω3不飽和化酵素のみを発現させると、パルミトレイン酸由来だと想定される新規の不飽和脂肪酸が検出された。 次に、それぞれの株の各種ストレス(アルコール、酸、塩、酸化、凍結、高温)に対する反応性を検討したところ、ω3不飽和化酵素のみを発現する株がアルコール、高塩(高浸透圧)、凍結融解に対して耐性を示すことが明らかとなった。この結果は、これまで我々が注目していた鎖長18以上の不飽和脂肪酸より、もっと炭素数が少ない(16以下)不飽和脂肪酸の方がストレス耐性に重要な役割を担う可能性を示唆するものである。以上の結果を踏まえ、今後更に詳細な解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外来性の不飽和化酵素遺伝子の発現量が少ないと合成される不飽和脂肪酸量が十分ではなく、逆に発現が高過ぎると酵母の生育が著しく阻害される現象が明らかとなり、そのバランス調整に手間取っている。また、酵母の生育温度や増殖ステージによって、合成される不飽和脂肪酸量が大きく変化することも明らかとなってきた。これらは実際に実験をスタートして初めて浮き彫りにされてきた問題であり、当初の研究計画より進行が遅れる原因となっている。しかしながら、今後の研究を進める上で避けて通れない重要なポイントであるため、慎重に解決を試みる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き実験室酵母における多価不飽和脂肪酸合成系の確立目指し、目的とする不飽和脂肪酸の合成が確認されればストレス耐性との関連性について検証を進める。リノール酸、α-リノレン酸についてはほぼ合成できるようになったので、本年度は鎖長延長酵素の導入により、更に鎖長の長いアラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸の合成系の確立を目指す。また、今回新たに見いだされた、ω3不飽和化酵素発現株のストレス耐性表現型について更に踏み込んだ解析を行う。具体的には、ω3不飽和化酵素の発現により合成された新規脂肪酸の分子構造の決定と、実際にストレス耐性に寄与している分子種の同定、更にその作用機序についても研究を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度も前年度同様、試薬類、合成オリゴDNA、チップ・チューブ・プレート等の消耗品など、物品費として使用する計画である。現在のところ、50万円以上の物品の購入は予定していない。また、研究の進展状況により、学会発表や情報交換を目的とした講演会参加のための旅費、論文作成・投稿のための雑費(その他)を支出する可能性がある。
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Research Products
(8 results)