2014 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母を用いた多価不飽和脂肪酸の生理機能解析とストレス耐性化への応用
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24580109
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 晃一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (90282615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 純 龍谷大学, 農学部, 教授 (00343822)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 微生物 / 出芽酵母 / バイオエタノール / 酢酸 / ストレス耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化や化石燃料の枯渇といった世界的な問題の解決に向けて、バイオエタノール製造技術の高度化が進められている。しかし、エタノール製造過程で発生する様々な物理化学的なストレスが酵母の発酵を阻害することが大きな壁となっている。そのような問題を解決する目的で、私は多面的なアプローチにより酵母のストレス耐性化を目指した。 平成24年度と25年度は、細胞膜に含まれる脂肪酸組成を人為的に変化させてストレス耐性化を誘導することを試みた。様々な多価不飽和脂肪酸やステロールを蓄積する酵母を作出したが、これらの脂肪酸の増加は酵母の生育に対して抑制的な性質を示し、明確なストレス耐性化を誘導することはできなかった。 そこで最終年度は短鎖脂肪酸である酢酸に着目した。酢酸は糖化液製造時に副産物として生成し、酵母の発酵を強く阻害する。その反面、低濃度でも雑菌増殖を効果的に抑制するため、この特質を活かせばコスト増の主因である滅菌工程を省くことができる。私は未滅菌でも雑菌汚染が生じないバイオエタノール製造システムの構築を目指し、酵母に簡便に酢酸耐性を付与する技術の開発を試みた。 自然界や発酵食品より分離した約500の出芽酵母株から、酢酸に対して強い耐性を示すものをスクリーニングし、その耐性には転写因子をコードするHAA1遺伝子が深く関わることを明らかにした。次に実験酵母にHAA1遺伝子を過剰発現させたところ、非常に強い酢酸耐性が誘導された。更に、世界中でバイオエタノール製造に用いられている産業用酵母(Ethanol Red(ER)株)も同じ方法で酢酸耐性化することに成功した。通常のER株は酢酸存在下で全く発酵できないのに対し、酢酸耐性化ER株は酢酸の有無および雑菌の添加に全く影響されず良好な発酵を示した。産業利用に供するには更なる実証試験が必要であるが、バイオエタノール製造の低コスト化に向けた大きな一歩である。
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Research Products
(8 results)