2012 Fiscal Year Research-status Report
白麹菌の高クエン酸生産機構解明と有機酸高生産株の育種
Project/Area Number |
24580116
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 正利 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90274521)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二神 泰基 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60512027)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 応用微生物学 / ゲノム / マイクロアレイ解析 / Aspergillus / 有機酸発酵 |
Research Abstract |
本研究では、我が国の伝統的発酵食品製造に用いられる白麹菌 Aspergillus kawachii を特徴づけている性質の一つであるクエン酸高生産機構の解明を目指す。特に有機酸トランスポーターに焦点をあて、白麹菌がどのようなメカニズムでクエン酸を大量に生産するのかを明らかにする。また、得られた情報を活用して有用有機酸であるイタコン酸を高生産する白麹菌の育種を試みる。本年度は以下の成果を得た。 1.白麹菌の高効率相同組換え株の構築と栄養要求性株の取得。白麹菌は実用株で栄養要求性マーカーが付与されていない。また、麹菌では相同組換え効率が低いため、遺伝子ターゲティングが困難である。そこで、白麹菌の非相同末端結合に関与する ligD 遺伝子の破壊株を構築して、本菌を宿主として、アルギニン、ウラシル要求性株を取得した。 2.白麹菌ゲノム情報解析とマイクロアレイ解析による遺伝子破壊ターゲットの決定。白麹菌のゲノム情報を詳細に解析した結果、細胞膜に局在するアニオン(有機酸)トランスポーター(TP)をコードする2つの遺伝子が存在すること、また、植物におけるクエン酸トランスポーターのホモログとして、2つの遺伝子が存在することを明らかにした。上記で構築した白麹菌宿主菌を用いて、これら4つの推定細胞膜TPの遺伝子のうち1つの遺伝子破壊株のを構築した。一方、ゲノム情報によると、ミトコンドリア局在有機酸トランスポーター (MtTP) をコードすると推定される遺伝子は少なくとも 32 存在する。マイクロアレイ解析によって、これらのうち 11 の推定 TP 遺伝子が、クエン酸生産誘導時に発現量が増加していることを明らかにした。また、クエン酸生産に関与する TCA 回路上の代謝酵素をコードする遺伝子のうち6遺伝子が、クエン酸生産誘導時に発現量が増加していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、白麹菌ゲノム情報とマイクロアレイ解析による遺伝子破壊ターゲットを決定することができた。また、同時並行して行った白麹菌の高効率遺伝子ターゲッティング宿主の開発にも成功し、同菌を宿主とした一部の推定TP遺伝子破壊株の構築を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 白麹菌TP遺伝子破壊株の構築と有機酸生産量の測定。有機酸トランスポーターをコードすると推定される遺伝子のうちクエン酸高生産時に発現している 15 種類の TP 遺伝子の破壊株全てを構築する。構築した破壊株の有機酸生産量を調べる。Tricarboxylate の輸送に関与すると推定される遺伝子については、必要に応じて多重遺伝子破壊株の構築も検討する。遺伝子破壊によりクエン酸生産量を低下させる遺伝子が同定できれば、同遺伝子の過剰発現株を構築し、クエン酸生産量が増加するか否か確認する。クエン酸量の変化とリンゴ酸やオキザロ酢酸など他の有機酸量の変化の相関性を調べ白麹菌 TP の有機酸輸送における役割を推定する。一方、TP破壊株全てにおいて、有機酸生産量に変化がない場合は、マイクロアレイ解析で情報を既に取得しているクエン酸生産誘導期に発現しているクエン酸代謝経路に関わる遺伝子の破壊を行い、有機酸生産量の変化を調べる。 2.白麹菌でのイタコン酸生産。白麹菌でイタコン酸を生産させるため、cis-aconitate decarboxylase をコードする遺伝子を Aspergillus itaconicus からクローニングする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|