2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜の動態計測から探る深海性好圧性細菌の圧力適応機構の解明
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24580122
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 文快 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (30360746)
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Keywords | 深海好圧性細菌 / 細胞膜物性 / 時間分解蛍光偏光解消法 / TMA-DPH / 至適増殖圧力 |
Research Abstract |
海洋研究開発機構が保有するShewanella属、Moritella属、およびPhotobacterium属の深海好圧性細菌について、細胞膜の物性を解析した。すなわち、低温・常圧培養した菌体を蛍光偏光プローブTMA-DPHで標識し、時間分解蛍光偏光解消法によって膜の秩序因子と脂質アシル鎖の回転拡散係数を計測した。そして、これらの値が各種細菌の至適増殖圧力とどのような関係にあるのかを調べた。その結果、膜の秩序因子はいずれの菌株でも0.65~0.75の値を示し、菌株間で大きな差異は見られなかった。一方、脂質アシル鎖の回転拡散係数は、至適増殖圧力が高い株ほど低く、すわなちアシル鎖の回転が遅いことがわかった。このことは、より高い圧力に適応した菌株ほど膜構造が剛直であることを示唆しており、「深海性細菌の膜は柔らかい」という通説に反するものだった。一方、中性菌である大腸菌の場合、細胞膜は非常に柔軟で、加圧すると著しく圧縮されることがわかった。各菌株を高圧下で培養し同様に膜物性を調べようとした。ところが、高圧チャンバー内のような微好気条件下と、これまで行ってきた振とう培養条件では、同じ大気圧下でも膜物性に差異が生じ、高圧と常圧下での膜物性は単純に比較できないことがわかった。そこで現在、酸素飽和したフロリナートを培養液と共存させ、酸素共有量を増大させた条件での高圧チャンバー内培養を試みている。また、ガスクロマトグラフィー装置を用いて各菌株の脂肪酸組成を調べ、膜物性との相関を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Moritella属、およびPhotobacterium属の深海好圧性細菌においては、これまでに細胞膜物性に関する報告例がなく、本研究成果の新規性は高いものと言える。また、至適増殖圧力と脂質アシル鎖の回転拡散係数の逆相関は興味深く、生物種を越えた普遍性が見いだされる可能性もある。ただし、当初予想していなかったこととして、培養時の通気性が膜構造に影響を及ぼした点が挙げられる。これについては、酸素飽和フロリナートを用いて最適培養条件を探る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、深海好圧性細菌の培養は低温・常圧下で行っている。今後は培養を低温・高圧下で行い、かつ時間分解蛍光偏光解消法を高圧下で実施する。これについては既に専用の高圧セルを開発しており、150 MPaまでの高圧条件下で測定が可能である。また、ガスクロマトグラフィーにより菌体の脂肪酸組成を調べ、膜物性とどのように相関するかを明らかにする。特に深海性細菌の多くがEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸を多く蓄積していることから、その割合が高圧培養とともにどのように変動し、膜物性にいかなる影響を及ぼすのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Shewanella violacea DSS12株の膜物性を調べる過程で、何らかの理由で以前とのデータに差異が生じてしまった。すなわち、膜の秩序因子が低下し、見かけ上膜の剛直性が失われているように思われた。そこで、培養条件を変えたり菌株のクローン化を行ったり、他機関から同一菌株を取り寄せるなど、データの再現性を得るために多大な時間を要した。その結果、予定していた実験が完了せず必要となる試薬購入ができなかった。 Shewanella violacea DSS12株の細胞内に何らかの蛍光物質が蓄積し、蛍光偏光解消測定を妨害しているらしいことがわかった。今後は菌体を破砕し、膜成分だけを抽出した標品で測定を行うことを計画している。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Functional mapping and implications of substrate specificity of the yeast high-affinity leucine permease Bap22014
Author(s)
Usami, Y., Uemura, S., Mochizuki, T., Morita, A., Shishido, F., Inokuchi, J. and Abe, F.
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Journal Title
Biochim. Biophys. Acta
Volume: 1838
Pages: 1719-1729
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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