2014 Fiscal Year Research-status Report
腸を酸化ストレスから防御するプロバイオティックス乳酸菌の開発
Project/Area Number |
24580125
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
新村 洋一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (00180563)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 過酸化水素分解 / 過酸化脂質還元 / プロバイオティックス / 乳酸菌 / 酸化ストレス防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
過酸化物は酸化ストレスの要因物質であり、腸は酸化ストレス防御の要であるが、腸の過酸化物分解活性は通常組織の1/10以下である。従って、その分解力強化は、生体のストレス防御力強化に極めて有効と考えられる。申請者はその強化法として、過酸化物を分解する乳酸菌の腸内導入に興味を持ったが、過去の報告は見いだせなかった。そこでスクリーニング法を開発し、高活性な過酸化物分解乳酸菌の分離に成功した。本申請目的は、この分離乳酸菌を活用し、腸内の酸化ストレス防御系を確立することである。 菌体外の過酸化脂質を、強力分解する乳酸菌 Lactobacillus plantarum P2株を分離し、菌体外の過酸化脂質分解に初めて成功した。過酸化脂質分解菌(L. plan. P2株)の過酸化水素分解力は低い。そこで前申請において、新たに菌体外の過酸化水素を分解する乳酸菌の分離を試み、Pediococcus pentosaceus Be1株を分離した。本株は乳酸菌で初の複数過酸化水素分解酵素を有した。 前年度で酵素反応解析を行い、本年度では、2分離株の生体内発現を検討するため、バイオアッセイ(線虫)系を確立し、同系によりL. plan. P2株で顕著な過酸化脂質分解活性、P. pent. Be1株では過酸化水素分解活性のin vivo での発現が観察された 。延命効果からは、両株の酸化ストレス防御効果が実証された。 L. plan. P2株では、酸化タンパクの発生が推定される結果も得たため、過酸化水素の生成を検討したところ、培養後期にその生成を観察した。この原因酵素を精製したところ、NADH peroxidase が遊離フラビンと反応して酸素から生成することが示唆された。ヘミンを添加して培養したところ、ヘムカタラーゼが菌体内に生成し、過酸化水素の生成を防御することが観察された。 以上の結果に基づき、L. plan. P2株を利用した完全な過酸化物消去系の完成が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2分離株の生体内発現を検討するためのバイオアッセイ(線虫)系を確立から、 L. plan. P2株で顕著な過酸化脂質分解活性、P. pent. Be1株では過酸化水素分解活性のin vivo での発現が観察され、延命効果からは、両株の酸化ストレス防御効果が実証された。生体外、生体内での過酸化物分解活性が実証され、以下の新規4事項が明らかになった。以上の結果、 L. plan. P2株を利用した完全な過酸化物消去系の完成が期待される。 1.分離した過酸化脂質分解菌の過酸化脂質分解酵素が、新酵素として示唆された。 2.分離した過酸化水素分解株は、乳酸菌で初の複数過酸化水素分解酵素を有した。 3.バイオアッセイ(線虫)系から、両分離株で過酸化脂質分解活性、過酸化水素分解活性のin vivo での発現、延命効果からは、両株の酸化ストレス防御効果が実証された。 4.培養後期に過酸化水素生成を観察し、NADH peroxidase が遊離フラビンと反応して酸素から生成することが示唆された。ヘミンを添加して培養したところ、ヘムカタラーゼが菌体内に生成し、過酸化水素の生成を防御することが観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは、過酸化脂質分解菌(L. plan. P2株)のヘム添加培養で顕著な過酸化水素分解活性の発現を見いだしたている。ヘムは広く用いられる食品素材であり、ヘム添加によるL. plant. P2株の過酸化水素分解力の強化を継続したい。また同株と、P. pent. Be1株との複合菌による過酸化水素分解力強化を試みる。活性を強化した単一菌もしくは複合菌の過酸化脂質分解力と過酸化水素分解力をバイオアッセイ(線虫)系で評価し、優良条件を選抜する。以上の結果に追加して、以下の3項目が新規事象のため、更なる研究を進めたい。 1.本申請で分離した過酸化脂質分解菌の過酸化脂質分解酵素は、新酵素であることが示唆されている。結晶構造解析から、反応機構を明らかにして、新酵素を提唱をしたい。 2.分離した過酸化水素分解株は、乳酸菌で初の複数過酸化水素分解酵素を酵素学的に証明したい。 3.バイオアッセイ(線虫)系から、両分離株で過酸化脂質分解活性、過酸化水素分解活性、延命効果から、両株の酸化ストレス防御効果が実証されため、各酵素活性との関連を実証したい。
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Causes of Carryover |
本申請では、新規の3事象を明らかにした。 1.分離した過酸化脂質分解菌の過酸化脂質分解酵素は、新酵素であることが示唆されている。反応機構を明らかにして、新酵素の提唱をしたい。2.分離した過酸化水素分解株は、乳酸菌で初の複数過酸化水素分解酵素を有した。3.バイオアッセイ(線虫)系を確立し、両分離株で過酸化脂質分解活性、P. pent. Be1株では過酸化水素分解活性のin vivo での発現が観察された 。同系の延命効果から両株の酸化ストレス防御効果が実証された。 以上の結果は、乳酸菌のみならず、一般微生物界で新規事象の発見のため、上記の3項目の投稿に必要な補充実験を行い、27年度で論文投稿予定です。科研費基盤研究として完成せるために、次年度使用額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画を3項目別に記述いたします。 1.新過酸化脂質分解酵素としての提唱:反応機構を明らかにして、結晶構造解析と変異酵素の作成も併用して新酵素の提唱をしたい。2.過酸化水素分解株の複数過酸化水素分解酵素:各分解酵素の諸性質解析し、酵素的に実証したい。3.バイオアッセイからの、過酸化脂質分解活性、過酸化水素分解活性、酸化ストレス防御効果:各生理活性と過酸化物分解酵素活性との関係を明らかにする。 上記の3項目必要経費: 酵素精製消耗品費、酵素活性試薬代、英文校閲費、論文投稿費
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[Journal Article] NADH oxidase and alkyl hydroperoxide reductase subunit C (peroxiredoxin) from Amphibacillus xylanus form an oligomeric assembly2015
Author(s)
Toshiaki Arai, Shinya Kimata, Daichi Mochizuki, Keita Hara, Tamotsu Zako, Masafumi Odaka, Masafumi Yohda, Fumio Arisaka, Shuji Kanamaru, Takashi Matsumoto, Shunsuke Yajima, Junichi Sato, Shinji Kawasaki, and Youichi Niimura
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Journal Title
FEBS Open Bio
Volume: 5
Pages: 124-131
Peer Reviewed / Open Access
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