2013 Fiscal Year Research-status Report
高度な安定性を有するコレステロール酸化酵素の触媒機構の解明と高活性化
Project/Area Number |
24580127
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
道久 則之 東洋大学, 生命科学部, 教授 (60302957)
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Keywords | コレステロールオキシダーゼ / 臨床検査 / コレステロール |
Research Abstract |
既知の微生物由来のコレステロールオキシダーゼ(COX)の中で、最も高い熱安定性、界面活性耐性、有機溶媒耐性を示すCOX (Chromobacterium sp.DS-1株由来)の探索に成功し、酵素の諸性質の解析、遺伝子解析、X線結晶解析による立体構造の解析を行ってきた。本研究では、DS-1株由来のCOXの触媒活性に関与する部位を同定して触媒機構を解明し、それらの知見をもとに、高安定かつ高活性なCOXを創製することを目的とした。COXの補酵素であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)近傍のアミノ酸が酵素の触媒活性や安定性に関与していると考え、部位特異的変異導入法によって他のアミノ酸に置換した変異体酵素を作製し、変異体酵素の活性や安定性について調べた。DS-1株由来COXの立体構造から、W22,W65,P128,P130,H144などが、FAD近傍に存在することがわかった。そこで、これらのアミノ酸をアラニンに置換した変異体酵素を作製することにした。また、分子シミュレーション解析によりP130をヒスチジンやアスパラギンに、H144をチロシンなどに置換すると安定性が向上する可能性が示唆されたため、これら変異体酵素発現用プラスミドも作製した。これらのプラスミドを、大腸菌に導入し、調製した菌体破砕液を用いて、陰イオン交換クロマトグラフィーにより、COXを精製した。精製を行うことができたW22A,W65A,P128A,P130Aにおいて反応速度論的解析を行った結果、いずれの変異体においても野性型COXと比較して触媒効率が大きく低下していた。この結果から、これらのアミノ酸がDS-1由来COXの触媒活性に関与していることが示唆された。また、P130を他のアミノ酸に置換すると酵素が安定化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱、界面活性剤、有機溶媒に対して高い安定性を示すChromobacterium sp.DS-1株由来のコレステロールオキシダーゼ(COX)の触媒活性に関与する部位を同定して触媒機構を解明し、それらの知見をもとに、高安定かつ高活性なCOXを創製することが本研究の目的である。DS-1株由来のCOXの構造をもとに、活性に関与すると予想されるアミノ酸残基を推定し、部位特異的変異導入法によって他のアミノ酸に置換した変異体酵素を作製し、反応速度論的解析を行った。この結果、触媒活性に関与していることが示唆されるアミノ酸を同定することができた。また、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)近傍のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したところ安定性が向上することが分かった。これらの結果から、研究の目的をおおむね達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
DS-1株由来COXの触媒活性や安定性には、補酵素であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)近傍のアミノ酸が関与するものと考えられる。そこで、引き続き、FAD近傍のアミノ酸を部位特異的変異導入法によって他のアミノ酸に置換した変異体酵素を作製し、反応速度論的解析を行い、活性や安定性への影響を調べる予定である。また、本酵素とアミノ酸配列の相同性があり、本酵素よりも比活性の高いCOX(Pseudomonas属細菌由来)のアミノ酸配列の情報を基に本酵素の高活性化についても検討する予定である。
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