2012 Fiscal Year Research-status Report
放線菌群の腐植質代謝に基づく土壌微生物共生構造の新たな理解
Project/Area Number |
24580128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上田 賢志 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00277401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (50385994)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Streptomyces / humus / respiration / electron transfer / differentiation / secondary metabolism |
Research Abstract |
一部の放線菌が生産することが知られるシデロフォアの一種であるデフェリオキサミン(DF)が、系統的に多様な細菌に対して、その増殖や特定の機能発現に対して多面的な効果を及ぼすことを明らかにした。特に、Microbacterium属に含まれるいくつかの分離株はその増殖にDFの添加が必須であった。一方、増殖はあまり影響を受けないが遊走性や色素生産などの形質がDFの添加によって誘発される菌も見いだされた。逆に、DFの添加によって顕著に増殖が阻害される菌も多様な分類群からみつかり、シデロフォアの利用性を介した微生物群集の協調・競合の構造が生態系に広がっていることが示唆された。 腐生担子菌と放線菌自然界分離株HT119株との共培養において観察されたフェノール分解促進現象について、前者が生産するリグニン分解酵素ラッカーゼの活性を増強する後者の活性についてその単離精製を実施した。その結果、活性本体はHT119株が細胞外に生産している蛋白質であり、そのN-末端の配列はS. coelicolor A3(2)のゲノム上に存在する機能未知の蛋白質のN-末端付近の配列と高い相同性を示した。結晶構造解析から金属イオンが配位することが示唆されている本蛋白質は、おそらくその酸化還元活性を介してラッカーゼ活性を促進しているものと予想される。 Streptomyces coelicolor A3(2)株を用いて、末端呼吸に関与する一連の酵素遺伝子を破壊し、その影響を調査した。その結果、特にシトクロムオキシダーゼをコードする遺伝子の破壊株では分化と二次代謝の阻害が起こることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腐植質と放線菌の増殖に関連する生理現象とそこに介在する酵素や遺伝子ならびに代謝産物を同定するための基礎を順調に固めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、放線菌の生理に対する腐植質の役割と機能を明らかにするための多角的な検証を分子生物学的手法を用いて精力的に実施する。その際、関連する遺伝子の破壊による効果の観察に加え、網羅的な遺伝子発現の比較を積極的に取り入れることで細胞内における代謝ネットワークを総合的に判定する試験も実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様に、放線菌を用いた分子生物学研究を推進するために必要な一連の消耗品の購入に充当するが、上述の網羅的な解析に関する受託解析にも使用する。学会(日本放線菌学会大会、広島)への参加にかかる旅費にも使用することを予定する。
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